「え?」

なんで?

月乃が少し笑いながら言った。

「いつもより口元緩んでる。」

咄嗟に口元を手で覆う。

なんでだ?

いいことなんかあったっけ?

「もしかして好きな子でもできた?」

いたずらっぽい目で俺を見つめる。

「できないよ、そんなの。」

誰かの顔が、頭に浮かぶ前にそれをかき消したのは秘密。

だけど好きなやつなんてできない。

彼女なんて作らない。

だって俺は、お前のそばにいるから。

月乃のことをずっと守らなきゃいけないんだ。

「廉、あたしのこと好き…?」

たまにこんなことを聞く月乃。

俺は決まってまるで機械のように答えるんだ。

「好きだよ。」