その人は俺を見ると、ニコッと笑った。

「こんにちは、突然お邪魔してすみません…」

「いいのいいの!ほら、寒かったでしょ。上がって!」

「あ、こちらは…」

「中で詳しく聞くから!」

促されるまま、家に上がると冷えきった体に温かい暖気がしみていく。






「藤咲君、ありがとう。」

ご飯をごちそうになり、春川の家を出たのは九時前。

「いやいや、こちらこそ。本当に楽しかったし、美味しかった。」

こんなに賑やかな食卓は久しぶりだった。

突然俺にも歓迎してくれて。

「あの、またいつでも来てね。」

そういう春川がたまらなく愛しくて。

「藤咲君、ほんとうにありがとう!」

寒い冬でも、暖かく照らしてくれるひだまりのような彼女。

そんな春川のことが、俺は好きだ。

「また連絡するね。」

寒いはずなのに、不思議と俺は寒くなかった。

最後に笑ったあの笑顔が、ずっと俺に残っていく。

これからも、ずっと笑っててほしい。

俺が笑顔にしていきたい。