「わかんなかったら、もう一回だけ言う。」

あたしの手を掴んだまま、藤咲君は言う。

「お、お願いします…」

少しため息をつくと、藤咲君はあたしの目を見ていった。

「春川が好きだ。…俺と、付き合ってほしい。」

夢、じゃないんだよね。

藤咲君が、あたしのことを好き?

こんな夢にまで見たことが、現実に起こってる。

信じられない。

だってあたしがずっと好きだった人が、あたしのことを好きだって言ってくれてる。

こんな奇跡みたいなことって、あるの?

「…あたしも!あたしも藤咲君のことが、大好きです…っ…」

嬉しくて、涙が止まらない。

こんなに嬉しいこと、ない。

「俺と、付き合ってくれますか?」

目の前には、少し顔を赤らめた大好きな人。


「…はい…」


春川日菜、十七歳、十二月二十四日、奇跡が起こりました。