これからもずっと、月乃は俺の大切な人に変わりない。

そのことは絶対に変わらないんだ。

「じゃあね!廉!またね!」

手を振りながら、月乃は搭乗ゲートの中に入っていってしまった。

人混みに姿が見えなくなると、本当に行ってしまったんだと自覚する。

「廉、寂しいな、廉も月乃ちゃん、あれ以来色々大変だったよな。なかなか家に帰れなくてごめんな。」

父さんが珍しく弱々しい声で言った。

本当は何度も泣きそうになった。

一人で暗い家にいると、不安で仕方なかった。

月乃が泣いているのを慰めながら、自分も何度も泣きたくなった。

あの日以来、俺は泣かなかった。

葬式の時も、四十九日の時も、泣かなかった。

泣いたのは一度だけ、母さんがなくなった夜、月乃が泣き疲れて眠ってしまったのを確認して、声を殺して泣いた。

もう俺を撫でてくれる温かい手も、優しい笑顔も、美味しい料理も、全部がなくなったんだと思ったらこれからどうすればいいのか、わからなくなって。