美恵ちゃんは言ってたっけ。

「無理して諦める必要ないの。日菜は自分に素直にならなきゃ。」

でもね、苦しい。

好きなのに、苦しいよ。

近くにいるのに、こんなにも遠く感じる。

「藤咲君…好きです。」

小さな声で言ってみる。

きっと聞こえていない。

あたしの、思い。

きっと届くことのない、でも届いてほしい。

もしあたしが藤咲君に告白したら、藤咲君はどう思うのかな。

やっぱり迷惑だよね。

だって藤咲君には彼女がいる。

そっと手を伸ばして、髪に触れてみる。

黒くて、さらさらの髪。

一年前の今頃は、こんなふうに髪を触るだなんて想像もしていなかった。

あたしは藤咲君と仲良くなるに連れて、どんどんわがままになってきちゃってる。

欲張りになってきてるんだ。

今だってこんなに近くにいるのに、もっと近い存在になりたいって思ってる。

でもね、彼女になりたいなんて、そんな贅沢なことは言わないよ。