そう笑う月乃は、本当に笑ってはいなかった。

幼なじみだからこそ、ずっとそばにいたからこそわかってしまう小さな違和感。

月乃はもしかして気がついているんじゃないか。

俺の中に、春川という存在がどんどん大きくなっていることを。

「廉、好き。」

そしてまた抱きついてくる。

こんなに細い体でたくさんのことを抱えている。

俺が守ってやらないと、俺がそばにいてやらないと。

「廉は、私のこと好き?」

俺は脳裏に浮かんだその屈託のない明るい笑顔を黒く、塗りつぶす。

「好きだよ。月乃。」

そう言うと、安心したように笑って頭を俺に預けてくる月乃。

隼人、ごめん。

やっぱり俺にはこいつから離れることなんてできない。

春川への気持ちは、きっと忘れられる。

最初から無理だったんだ。

許されないことだったんだ。

だからきっと、簡単だ。

忘れられる、必ず。