うちは父親は仕事の関係でめったに帰ってこない。

両親の祖父母はすでに他界していて、いつも一人だった。

そんな時、俺の面倒を見てくれたのが月乃の祖父母だった。

まるで本当の孫のようにかわいがってくれて。

母親がいなくなって、心に開いた穴が少しずつふさがっていくような気持ちがした。

「廉は?私が行くっていったら、どうする?」

涙目で俺を見上げる月乃。

月乃が待っている答えはもうわかっている。

だけどそれを言ってあげるのが、本当に優しさなのか?

「行くな。」

そう言えばきっと、月乃は行かないだろう。

だけどそれが本当に月乃にとっていいことなのか。

本当に月乃のことが大切なら、きちんと言ってやるべきなんじゃないのか。

心の中で2つの声が葛藤していると、月乃が俺から離れた。

「私、行かない。だって廉のそばにいたいもん。それにおじいちゃんやおばあちゃんのことだってあるしね。」