「月乃だってもう子供じゃないんだぜ。廉、本当にそれでいいのか？」

隼人の言っていることは正しい。

だけど俺はそれをできない。

どうしてもあいつのそばから離れることはできない。

だって、あいつは泣くんだ。

それは数日前のこと。

月乃の家に行き、部屋に入るやいなや、月乃は俺に抱きついてきて。

「廉、私、廉と離れたくない…っ」

話を聞くと、この前あった月乃の父親との話だった。

月乃の父親である桐原柊斗さんは今、ドイツの会社で働いているらしい。

ずっと月乃に会いたくて、一時帰国した今月、会いに来たらしい。

そして月乃に言った。

「俺とドイツで暮らさないか？」

ドイツなんて遠い国に行ってしまえばなかなか会うことはできない。

「でもね、…私わかったの。あの人は、お父さんは私とお母さんのことを今でも大切に、すごく大切に思ってくれてるってこと。」

俺は少し羨ましかった。