それからあとのことはあまり覚えていない。

ただ泣きじゃくる月乃の手をぎゅっとにぎって気がつくと、朝を迎えていた。

隣には呆然と泣き腫らした目をした月乃。

夢じゃなかった。

もう二度と、二人には会えない。

「…廉…どうしよう…あたし、一人ぼっちになっちゃった…」

月乃が呟くように言った。

月乃の両親はこいつが5才の時に離婚していて、月乃は祖父母と母親である汐莉さんの四人で暮らしていた。

「つき…」

「ねえ…あの窓から飛び降りたらお母さんに会えるのかな…」

そう言うと月乃は病室にある窓から身を乗り出した。

ここは三階。

落ちたら…

「やめろよ!」

「離して!離してよ!お母さんに会わせて!」

「月乃!」

月乃の体を抱き締めてそう言うと暴れていた月乃から急に力が抜けていった。

「…俺がずっとそばにいるから…月乃は一人ぼっちなんかじゃない。」

月乃の細い体を強く抱き締めた。

「っ…うっ…ふぅ…れ、ん…廉…約束だよ…?」

「うん、絶対お前を一人ぼっちなんかにさせない。」

その日交わした二人の約束。