「女の子のならすぐに選べるんだけど、男の子って何がほしいのかわかんないから迷っちゃうよね。」

春川は少し困ったような顔で笑った。

「弟のね、誕生日もうすぐなの。九月三日。」

そういえばもうすぐ夏休みも終わり。

いよいよ高校二年生もあと半分。

この前進級したばっかりだと思っていたのにな。

春川と出会ってもうすぐ半年がたつんだ。

「春川って兄弟多いよな。」

「そうかなぁ?三人だよ。」

あれ?

四人じゃなかったんだ。

じゃあ、あの表札の名前は何だったんだ?

「藤咲君は一人?」

「うん。」

母親がいなくなって、父親も仕事で忙しくて家で一人でいるときに何度も兄弟がいたらなって思ったっけ。

「でもね、真生、あ、弟ね。最近生意気になってきちゃって…反抗期なのかな。ふふっ。」

春川が笑うと、相変わらずなんだか心のうちが暖かくなる気がする。

家族みんなが仲良くて、幸せな家庭で大切に育ってきたんだなってすごくよくわかる。