「お母さんは?」

黙ったままの父親がたまらなくもどかしくて。

月乃は相変わらず放心したようにボーッとしてる。

「藤咲さん、冬山さん!」

手術中のランプがパッと消えたかと思うと中から医者らしき人が出てきた。

「ひより…日和は?」

いつも俺の前ではお母さんと呼んでいた父親が母親の名前を呼ぶのはほんとにたまにしか見たことがないのに。

「残念ですが…手は尽くしました…」


「っ…」

なんだよ…どういう意味だよ…わけわかんねえ。

「お父さん!早く!早くお母さんに会わせろよ!なあ!」

なんでそんな顔してんだよ!

「廉…月乃ちゃん…お前たちのお母さんはもういない。」

いないって…それは…

「っ…うっ…うわぁぁぁ…」

それまで静かだった月乃が急にその場に顔をおおって崩れた。

なんで月乃まで泣いてるんだ?

もういないってなんだよそれ…

「藤咲日和さん、冬山汐莉さんのご家族のかた、こちらへ…」

看護師の人についていき、病室に入ると…

「…っ…」