それに父と似た顔立ちなのに、まるで違う。

「艶子、この家はもう私のものなのだ」

「ど、どういうことなの……?」

「お前の父親が死んで、会社もこの家も別荘もすべて私のものになったのだ」

 艶子は叔父が言っていることが理解できなかった。
顔を青白くし見つめていると、叔父が意地悪く笑う。

「お前にはここを出て行ってもらわなければならないんだよ」

「そ、そんな……!」

 突然のことに頭がくらくらとし追いつかない。
そもそもここを出て行かされても、自分に行く当てなどない。

 親族は叔父一人。
母は一人っ子で祖父母は既に亡くなっている。

 ここを出てどこに住むというのか。
これまで働いたこともない箱入り令嬢の艶子。
突然外に放り出されても何もできない。

「ここは私の家なのよ……お父様が残してくださった家だわ!」

 すると、叔母が「本当にうるさい娘ね!」と、また手を振り上げたので、身をキュッと縮ませた。
しかし痛みがやってこない。
恐る恐る顔を上げると、叔父が叔母の手を掴んで止めていた。

「あなた!」

 叔母は止められたことに顔を真っ赤にして怒っている。
それを叔父は無言で首を横に振るだけ。

「いいか、艶子。この家は今後私たちが住むことになる」

「……叔父様が?」

「あぁ、そうだ。今からここの主は私だ」

「なんてことなの……」

 父と艶子がこれまで過ごしてきた家。
母と姉の思い出も詰まっている特別な場所だというのに。