十八になる艶子は幼等部からエスカレーター式の大学に通っている。
教師や友人に恵まれ、何不自由なく楽しい日々を送っていた艶子。

 だが一つだけ、高等部の頃から周囲に恋人ができはじめると、人並みに恋に憧れを抱いた。
私も恋をしてみたいわ!と。

 艶子の周り男性、といっても父と立川になるが、二人共優しい性質で特に男性に怖いイメージなどない。
また、恋愛ドラマや映画の俳優たちは素直に素敵だと思えるし、恋人となるときっともっといいものに違いないと考えたのだ。
 
 そこで大学について進路を決める際に、父に共学の大学を受験してみたいと相談してみた。
基本的に艶子に甘い父。
これまで艶子の願いを拒まれたことはなかったため、今回もいいよと簡単に頷いて、大学について率先して下調べしてくれるのではと思った。

 しかし、娘を溺愛する父。
共学に行くことを許してはくれなかった。
断固として反対だと言われ、そのまま進学して今に至る。
それでも艶子としても少し憧れを抱く程度だったので、それほど反発はせず受け入れたのだった。


 父はというと、艶子のことを目に入れてもいたくないほどに可愛がると同時、それはもう心配した。
艶子は見た目がよいのはもちろんだが、体つきが女らしく異性の目を惹きつけてしまう。
彼女が高校を卒業してすぐ、一度連れて行ったパーティーでは、艶子をぜひ嫁にしたいと申し出る者がかなりいて、それ以来一切そのような場に連れ出さなくなった。

 大学の行き帰りは運転手を付け、絶対に一人で外には出さなかったし、友人と食事をする際は、家に呼びなさいと言って、ホームパーティーを開くほど。
過保護すぎるのでは?と立川が呆れるくらい、大切に育てていたのだ。

 今後においても、結婚適齢期になれば裕福な家の令息を婿にして、同じ屋敷で一緒に住もうとも考えていた。
しかし、それは叶うことはなかった。

 大学一年生の夏休みに差し掛かる一日前のこと、父は突然にして亡くなったのだ。