普段……こんなにも長く歩いたことがなく、なおかつ、そこかしこに瓦礫やガラスの破片が歩道にも多く散乱している中を歩くのはとても歩きにくく……初めての経験だった……。
途中、運悪く瓦礫の山に道が遮断され、遠回りをする羽目にもなってしまった……。
最初こそ意気込んで歩いていたが……30分も経つ頃には……ヘトヘトになっていた。
一刻も早く、君の無事を確認したいのに……段々と足に溜まっていく疲労感に耐えきれなくなって、危なくないか、周囲を確認してから道の端へと腰を下ろした。
上がった息を整え、流れ出す汗を拭う。
背負っていたリュックサックからペットボトルのお茶を取り出して、少しずつ口に含む。
本当は……歩き疲れ、渇ききった喉に向かって、お茶を思う存分ガバガバと心ゆくまで飲みたかった……。
けれど……今、僕が偶然、鞄に入れていたお茶がどんなに貴重か……分かっているから……グッと我慢した。
それは……普段、簡単に手に入っていたモノが地震の影響でいとも簡単に手に入らなくなってしまったから……。
君の家まで徒歩で向かうとなれば、当然のことながら長距離を歩く。
それならば、お茶か水がほしい……と、思った僕は君の家に向かう途中にあったコンビニに飛び込んだ。
一目散にお茶や水が置いてある冷蔵庫へと向かうも……。
な、い……。
すでにお茶と水があったであろう場所はがらん……と、していて他の飲み物が辛うじて数本あるだけだった……。
何でもいい。
飲み物であれば……とも思ったが喉の渇きを潤すならばやはりお茶か水、もしくはスポーツドリンクがいいと我儘なことを思い、残っている他の飲み物を手にすることはなかった……。
この時の判断を後々後悔してしまったのは言うまでもない……。
君の家を目指して歩いている中、目についたコンビニやスーパー、自販機で飲み物を求めたが、やっぱりお茶と水はすでに売り切れ、もしくは自販機の機械が故障していて買えなかった……。
あの時……飲み物の種類にこだわらなければ……と、後悔しつつ、手元にある限られた量のお茶をちびちびと大切に飲むしかなかったんだ……。
長距離を歩くことも大変だったけれど……水分補給が思うように出来ないことの方がさらに大変ですごく辛かった……。
今となっては……『あの時、よく倒れなかったな……』と、思う。
僕が君の家に辿り着く頃には……太陽が西へと傾き、暮れ始めていたーー……。