僕は座っていたソファーから勢いよく立ち上がると素早くラグが敷かれた床へに正座をし、頭を下げた。
「結婚を前提に娘さんとのお付き合いを認めて下さい」
僕は一気に言葉を言い放った。
すると君も僕の側に正座をして頭を下げた。
「パパ、ママ……お願いしますっ……‼」
「二人ともよしなさいっ……」
「そうよ、そんなことしなくても……」
急いで君の母親が君の側へと駆け寄り、君と僕に頭を上げるように促す。
「とりあえず……二人ともソファーに座ってから話をしよう。さあ……」
君の父親もソファーから立ち上がって、僕達に優しく声をかけてくれた。
僕達がソファーに座り直したことを確認してから、君の父親は話し出した。
「いきなり何を言い出すのかと思えば……いや、本当に…君には驚かされてばっかりだよ。なぁ、母さん」
「えぇ……」
君の父親は口許に手を置き、目を細めながらソファーに座り直した僕達を交互に見つめた。
両親に挨拶する……と、いうのはこういう感じなのだろうな〜と、思ってのことだったので、僕からしてみれば、やりすぎた……とは、思わなかった。
けれど君の両親の様子を見る限り、少々大袈裟にやりすぎたのかな……と、自分の行動を改めるきっかけになってしまった……。
「私達はてっきり、すでに交際しているものだと、思っていたんだがね」
「ーーっ⁉」
「えっ、そ、う……なの……?」
僕と君は同時に驚いた……。
「そうよ。貴方達、二人の雰囲気を見ていたら……誰だって、交際してるって、思うわよ」
僕達はお互いに頬を赤く染める……。
「それがまだ……交際してなかった……とは……。しかも、『結婚を前提に……』とは、随分、思いきったものだね……」
意味深に君の父親が言葉を紡ぎ、僕の方をじっ……と、真剣な眼差しで見つめた。
「……本当に君は、それでいいのかい?」
「ーーっ⁉」
「それが君にとっての後悔のしない生き方(・・・・・・・・・)……かい?」
「はいっ」
僕はハッキリと返事をした。
「……そうか……」
君の父親はゆっくり息を吐いて……一呼吸置いた後、再び話し出す。
「君がそう強く望んでいることなら……私達が二人の交際を反対する理由はない。二人の交際を認めよう」 
君と僕はお互いに顔を見合わせて、瞳を輝かせた。
「これからも娘のことを頼んだよ」
「よろしくお願いしますね」
瞳を潤ませながら君の母親が言葉を紡ぐと共に君の両親が深々と頭を下げた……。
「ありがとうございます」
「ありがとう……。パパ、ママ……」
僕達も深々と頭を下げて、感謝の思いを伝えたーー……。