「空いてるトコにテキトーに座って……」
君に声をかけながら僕はキッキンでやかんに水を入れ、お湯を沸かしはじめた。
僕が借りている部屋は玄関を入ってトイレ、お風呂と並び、その奥にキッチンとクローゼットが備えつけられた6畳1R。
部屋の奥にはベランダ付きの大きな窓があり、右の壁側に折りたたみ式のベッド、左の壁がわに簡易的なデスク一式と小さめの棚にクローゼットがある。
部屋の中心にはラグを敷いて、その上に小さな四角いテーブルがある。
家具は落ち着いたブラウン系で統一し、装飾等の飾りは一切ない。
僕が装飾等の飾りに興味がなく、持ち物もあまり持っておきたくないタイプなので部屋には最低限度のものしかなかった。
君は少し戸惑いながらもベッドを背にして、ラグが敷いてある場所へとちょこんと座った。
お湯が湧くのを気にしながら……僕はキッチンから君の傍に腰を下ろして、君に申し訳なさそうに言う……。
「……随分と待たせちゃったよね……?」
「ううん、そんなに待ってないよ」
君は僕の方に顔を向けて、サラリと答えた。
「曜日ごとに講義がだいたい何時くらいに終わって、それから家に着くまでの時間もだいたい教えてくれてたじゃない。それを参考にして、家を出たから……」
「そうは言っても……それはあくまで目安で……時には遅くなることもあるし……連絡くれたら……良かったのに……」
「……だって……」
君はしゅんとなって、俯く……。
その姿はまるでいたずらや危ないこと等をした時に親に怒られた子どものようだった……。
「あぁ……違うんだよ。別に僕は怒ってるんじゃなくて……君を1人、待たせるのが嫌なだけで……」
慌てて弁解をして、少しでも誤解がないように努めた。
君は俯いたまま……。
どうしよう……と、困惑しながら僕は優しく君に声をかけた。
「……だって…なに?」
「……か、っ……だ……ん……」
「えっ、なに……? ごめん、声が小さくて……聞こえなかった……。もう一度、言ってくれないかな……?」
申し訳なさそうに僕は君に言う。
「……驚かせたかったんだもんっ……!」
少し間を開けてから、君はまるで小さな子どもがすねるように……ボソッ……と、呟いた後……ぷーっと、頬を膨らませて不機嫌になった……。
……どうしよう。
内心、困る僕を尻目に君は俯いたまま……視線だけを動かして、ちらりと上目遣いに僕を見つめながら言った。
「……ねぇ、びっくりした?」
「えっ……」
「私が突然いて……びっくりした?」
「うん。すごーく、びっくりしたよ」
「やったー‼ 大成功〜」
顔を上げて、君が勢いよくバンザイをして、全身で喜びを表した。
震災が起きた日……感情を失った君が、今……こうして、少し年齢的にそぐわない感情表現をすることがあっても……『喜怒哀楽』と、いう感情を素直に表せるようになったことが嬉しくて僕の口許が自然と緩んだ。
そんな僕の姿を見て君が声を荒げる。
「あーっ! バカにしてるっ⁉」
「バカになんてしてないよ……」
僕は急いで言葉を紡いだ。
あらぬ誤解を抱かせて、君の機嫌を損ねなくなかったし、不穏な雰囲気にもなりたくはなかった……。
「ホント……?」
「ホントにホント。そういうトコも可愛いなって、思って」
ボンッ‼
瞬時に君の顔が真っ赤に染まった。
「もーー」
君は不機嫌そうな声を発したけど……その表情は幸福に満ちていて僕も幸福を感じたーー……。
君に声をかけながら僕はキッキンでやかんに水を入れ、お湯を沸かしはじめた。
僕が借りている部屋は玄関を入ってトイレ、お風呂と並び、その奥にキッチンとクローゼットが備えつけられた6畳1R。
部屋の奥にはベランダ付きの大きな窓があり、右の壁側に折りたたみ式のベッド、左の壁がわに簡易的なデスク一式と小さめの棚にクローゼットがある。
部屋の中心にはラグを敷いて、その上に小さな四角いテーブルがある。
家具は落ち着いたブラウン系で統一し、装飾等の飾りは一切ない。
僕が装飾等の飾りに興味がなく、持ち物もあまり持っておきたくないタイプなので部屋には最低限度のものしかなかった。
君は少し戸惑いながらもベッドを背にして、ラグが敷いてある場所へとちょこんと座った。
お湯が湧くのを気にしながら……僕はキッチンから君の傍に腰を下ろして、君に申し訳なさそうに言う……。
「……随分と待たせちゃったよね……?」
「ううん、そんなに待ってないよ」
君は僕の方に顔を向けて、サラリと答えた。
「曜日ごとに講義がだいたい何時くらいに終わって、それから家に着くまでの時間もだいたい教えてくれてたじゃない。それを参考にして、家を出たから……」
「そうは言っても……それはあくまで目安で……時には遅くなることもあるし……連絡くれたら……良かったのに……」
「……だって……」
君はしゅんとなって、俯く……。
その姿はまるでいたずらや危ないこと等をした時に親に怒られた子どものようだった……。
「あぁ……違うんだよ。別に僕は怒ってるんじゃなくて……君を1人、待たせるのが嫌なだけで……」
慌てて弁解をして、少しでも誤解がないように努めた。
君は俯いたまま……。
どうしよう……と、困惑しながら僕は優しく君に声をかけた。
「……だって…なに?」
「……か、っ……だ……ん……」
「えっ、なに……? ごめん、声が小さくて……聞こえなかった……。もう一度、言ってくれないかな……?」
申し訳なさそうに僕は君に言う。
「……驚かせたかったんだもんっ……!」
少し間を開けてから、君はまるで小さな子どもがすねるように……ボソッ……と、呟いた後……ぷーっと、頬を膨らませて不機嫌になった……。
……どうしよう。
内心、困る僕を尻目に君は俯いたまま……視線だけを動かして、ちらりと上目遣いに僕を見つめながら言った。
「……ねぇ、びっくりした?」
「えっ……」
「私が突然いて……びっくりした?」
「うん。すごーく、びっくりしたよ」
「やったー‼ 大成功〜」
顔を上げて、君が勢いよくバンザイをして、全身で喜びを表した。
震災が起きた日……感情を失った君が、今……こうして、少し年齢的にそぐわない感情表現をすることがあっても……『喜怒哀楽』と、いう感情を素直に表せるようになったことが嬉しくて僕の口許が自然と緩んだ。
そんな僕の姿を見て君が声を荒げる。
「あーっ! バカにしてるっ⁉」
「バカになんてしてないよ……」
僕は急いで言葉を紡いだ。
あらぬ誤解を抱かせて、君の機嫌を損ねなくなかったし、不穏な雰囲気にもなりたくはなかった……。
「ホント……?」
「ホントにホント。そういうトコも可愛いなって、思って」
ボンッ‼
瞬時に君の顔が真っ赤に染まった。
「もーー」
君は不機嫌そうな声を発したけど……その表情は幸福に満ちていて僕も幸福を感じたーー……。