大学受験当日。
ちらほらと粉雪が舞う日。
僕は君の住んでいる街にある大学入試を受けた。
試験を終えてから君に逢いに行こうと思えば逢えたのだけど……逢いに行かなかった……。
それは君の両親と約束があったから……。
ーー君がやらなければならないということをきちんとしてから……来てほしい……。例え、いくら時間がかかろうとも……必ず、娘の元へ……逢いに来てほしい……ーー
その約束を今、君の住んでいる街にいるから……
逢おうと思えば逢えるから……と、いって、いとも簡単に破るわけにはいかない。
きちんと約束を果たしてから君に逢わないと意味がないと思ったから逢いに行かなかった……。
そもそもどこの大学に通うかも試験の日も君には伝えてはいなかった。
言えば、君はきっと僕に逢いに来ると思ったから……。
もし、そうなってしまったら……それも君の両親と交わした約束を果たせなかったことになると思って、あえて君には伝えなかったんだ……。
受験勉強とアルバイトに追われる日々の中でも僕は君とのやり取りを欠かすことはなかった。
病院を退院し、引っ越してからすぐに新しく携帯電話を手にした君は僕に連絡をくれた。
君が引っ越し先で携帯電話を持つか、どうかは分からなかったけれど……念の為に僕は君が引っ越しする日に病院の駐車場で連絡先と僕が住んでいる住所を書いた紙を手渡していた。
どうしてそんなことをしたのかと、言えば……電話やメール、手紙にしろ……一つでも僕と君との間に連絡の手段があれば、君とのやり取りは途絶えることはない……と、思ってのことだった。
君からの連絡はメールや電話……時に手紙を書いてくれてこともあった。
君が引っ越して間もない頃はシンプルな内容で
『◯◯が出来るようになった』
『◯◯が美味しかったから、一緒に食べたい…』と、いった日常のささやかな出来事だった。
日が経つにつれて段々と……
『ツラい……』
『……哀しい……』
『逢いたい……』
『いつになったら逢える……?』
と、いった心情的なものが多くなっていき、何度も大学のことも聞かれた……。
その度に僕は……
『ごめん……』
『びっくりさせたいから大学に受かってから言うね』
『もう少しだけ……もう少しだけ、待っていてほしい……』
『必ず、会いに行くから。それまで、僕のことを信じて待っていてほしいんだ』
そういうありきたりなことしか言うことしかできない僕を君はどう思い、日々を過ごしていたのだろう……。
メールの文面や電話口から聞こえてくる君の淋しさや哀しみが容赦なく僕の胸を締めつけ、切なく、苦しくなると共に頭の中をよぎる『君の両親から出された条件』が今すぐにはどうにもできない現状に歯痒さと不甲斐なさも感じ、唇を噛みしめた……。
僕だって叶うことなら……今すぐにでも君に逢いにいって、抱きしめたい……。
ずっと、君の傍にいたい……。
もうすぐ……。
もうすぐなんだ。
だから、待ってて……。
逢いに行く。
必ず……君に会いに行くから……と、幾度となく自分自身に言い聞かせ続け、僕は大学入試へと臨んだーー……。
ちらほらと粉雪が舞う日。
僕は君の住んでいる街にある大学入試を受けた。
試験を終えてから君に逢いに行こうと思えば逢えたのだけど……逢いに行かなかった……。
それは君の両親と約束があったから……。
ーー君がやらなければならないということをきちんとしてから……来てほしい……。例え、いくら時間がかかろうとも……必ず、娘の元へ……逢いに来てほしい……ーー
その約束を今、君の住んでいる街にいるから……
逢おうと思えば逢えるから……と、いって、いとも簡単に破るわけにはいかない。
きちんと約束を果たしてから君に逢わないと意味がないと思ったから逢いに行かなかった……。
そもそもどこの大学に通うかも試験の日も君には伝えてはいなかった。
言えば、君はきっと僕に逢いに来ると思ったから……。
もし、そうなってしまったら……それも君の両親と交わした約束を果たせなかったことになると思って、あえて君には伝えなかったんだ……。
受験勉強とアルバイトに追われる日々の中でも僕は君とのやり取りを欠かすことはなかった。
病院を退院し、引っ越してからすぐに新しく携帯電話を手にした君は僕に連絡をくれた。
君が引っ越し先で携帯電話を持つか、どうかは分からなかったけれど……念の為に僕は君が引っ越しする日に病院の駐車場で連絡先と僕が住んでいる住所を書いた紙を手渡していた。
どうしてそんなことをしたのかと、言えば……電話やメール、手紙にしろ……一つでも僕と君との間に連絡の手段があれば、君とのやり取りは途絶えることはない……と、思ってのことだった。
君からの連絡はメールや電話……時に手紙を書いてくれてこともあった。
君が引っ越して間もない頃はシンプルな内容で
『◯◯が出来るようになった』
『◯◯が美味しかったから、一緒に食べたい…』と、いった日常のささやかな出来事だった。
日が経つにつれて段々と……
『ツラい……』
『……哀しい……』
『逢いたい……』
『いつになったら逢える……?』
と、いった心情的なものが多くなっていき、何度も大学のことも聞かれた……。
その度に僕は……
『ごめん……』
『びっくりさせたいから大学に受かってから言うね』
『もう少しだけ……もう少しだけ、待っていてほしい……』
『必ず、会いに行くから。それまで、僕のことを信じて待っていてほしいんだ』
そういうありきたりなことしか言うことしかできない僕を君はどう思い、日々を過ごしていたのだろう……。
メールの文面や電話口から聞こえてくる君の淋しさや哀しみが容赦なく僕の胸を締めつけ、切なく、苦しくなると共に頭の中をよぎる『君の両親から出された条件』が今すぐにはどうにもできない現状に歯痒さと不甲斐なさも感じ、唇を噛みしめた……。
僕だって叶うことなら……今すぐにでも君に逢いにいって、抱きしめたい……。
ずっと、君の傍にいたい……。
もうすぐ……。
もうすぐなんだ。
だから、待ってて……。
逢いに行く。
必ず……君に会いに行くから……と、幾度となく自分自身に言い聞かせ続け、僕は大学入試へと臨んだーー……。