しばしの沈黙の後。
重い空気が部屋の中を漂う……。
居心地の悪さを感じながらも僕は意見を曲げる気はサラサラないので、毅然とした態度で真っ直ぐに両親を見つめた。
父さんがゆっくりと口を開いた……。
「……お前の気持は良く、分かった……」
「えっ……」
「あ、なたっ⁉」
父さんの思いもよらぬ言葉に驚いたけど、僕以上に驚きの表情を浮かべて母さんは父さんを再度、見つめた。
父さんは母さんが言わんとする言葉を理解している……と、ばかりにやんわりと微笑むことで、口にすることを制した。
「だが、『はい、そうですか。』とは、言えない」
「ーーっ!」
「親として……息子の思いを叶えてやりたい……と、いう気持ちと同時に息子が何不自由なく未来を歩んでゆけるよう願う気持ちがある。自分の思いを貫く……と、お前が言うのであれば……条件がある」
「……じょ、うけん……」
「そうだ。その条件を守るというなら……お前の思う通りに……後悔のない生き方をしなさい」
「あなた……」
父さんがすんなりと認めると思ってなかったのだろう……。
母さんは父さんの言葉を聞いて愕然としていた……。
「わっ……私は認めませんっ‼」
膝の上に重ねて置いていた母さんの手がいつの間にか強く握りしめられ、その拳をわなわな……と、震わせながら叫んだ。
「そんな……簡単に認めるなんてこと……私には出来ませんっ‼ 『後悔しない生き方』…? そう、出来たら……どんなに良いか……。でも……現実はそう、容易いことではないのっ‼ 今……貴方にとって何が一番大切で、優先しなければならないことなのか……もっと、よく考えるべきよっ‼」
「僕なりだけど……よく考えて、決断したんだ」
「それは……一時的な感情に流されて、そう……決断した、だけのこと……。貴方自身の考えではないわ」
「違うっ!」
「違わないっ‼ この先の貴方の人生を棒に振るようなことだけは決して、しないでっ……‼」
なんて酷い言い方をするんだ……。
僕は強く唇を噛んだ……。
鋭い瞳で母さんを睨みつけ、言葉を口にしようとした瞬間……。
「母さん」
静かに父さんが母さんに声をかけた。
「もう、それ以上……言わなくても十分……心配している気持ちは伝わってるはずだ」
僕は父さんの言葉を聞いて、ハッ……と、した……。
冷静さを完全に失っていたこともあって……母さんの言葉の真意ー僕のことを心から心配しての発言だったんだ……と、いうことに気づかされた……。
父さんの言葉がなかったら、僕は……頭ごなしに反対する母さんとはこれ以上、何を話しても無駄だと感じ始めていた……。
お互いに自分の思いを譲らず、相手の思いを聞き入れることも出来ない……こんな状態で分かり合えるなんて……到底、無理だと、どこか諦めた気持ちを抱え、母さんの言葉は無視して、好き勝手にしようとさえ、思っていたから……。
チラッ……と、父さんが僕を見た。
「そうだろ?」
すぐさま、ごちゃまぜになった気持ちを整理すことが出来なくて……僕は戸惑い……ただ、頷くことしか出来なかった……。
「あいつなりによく考えて、そうしようと決めたことなんだ。思うようにさせてやろう。それでもし……仮にも条件が守れないようなら……どんなに本人が嫌がったとしても私達の元へ連れ戻す。それでは、駄目か?」
まだ、何か言いたげな表情を浮かべたまま……母さんはゆっくりと足元を見つめるように俯き、黙り込んでしまった……。
重い空気が部屋の中を漂う……。
居心地の悪さを感じながらも僕は意見を曲げる気はサラサラないので、毅然とした態度で真っ直ぐに両親を見つめた。
父さんがゆっくりと口を開いた……。
「……お前の気持は良く、分かった……」
「えっ……」
「あ、なたっ⁉」
父さんの思いもよらぬ言葉に驚いたけど、僕以上に驚きの表情を浮かべて母さんは父さんを再度、見つめた。
父さんは母さんが言わんとする言葉を理解している……と、ばかりにやんわりと微笑むことで、口にすることを制した。
「だが、『はい、そうですか。』とは、言えない」
「ーーっ!」
「親として……息子の思いを叶えてやりたい……と、いう気持ちと同時に息子が何不自由なく未来を歩んでゆけるよう願う気持ちがある。自分の思いを貫く……と、お前が言うのであれば……条件がある」
「……じょ、うけん……」
「そうだ。その条件を守るというなら……お前の思う通りに……後悔のない生き方をしなさい」
「あなた……」
父さんがすんなりと認めると思ってなかったのだろう……。
母さんは父さんの言葉を聞いて愕然としていた……。
「わっ……私は認めませんっ‼」
膝の上に重ねて置いていた母さんの手がいつの間にか強く握りしめられ、その拳をわなわな……と、震わせながら叫んだ。
「そんな……簡単に認めるなんてこと……私には出来ませんっ‼ 『後悔しない生き方』…? そう、出来たら……どんなに良いか……。でも……現実はそう、容易いことではないのっ‼ 今……貴方にとって何が一番大切で、優先しなければならないことなのか……もっと、よく考えるべきよっ‼」
「僕なりだけど……よく考えて、決断したんだ」
「それは……一時的な感情に流されて、そう……決断した、だけのこと……。貴方自身の考えではないわ」
「違うっ!」
「違わないっ‼ この先の貴方の人生を棒に振るようなことだけは決して、しないでっ……‼」
なんて酷い言い方をするんだ……。
僕は強く唇を噛んだ……。
鋭い瞳で母さんを睨みつけ、言葉を口にしようとした瞬間……。
「母さん」
静かに父さんが母さんに声をかけた。
「もう、それ以上……言わなくても十分……心配している気持ちは伝わってるはずだ」
僕は父さんの言葉を聞いて、ハッ……と、した……。
冷静さを完全に失っていたこともあって……母さんの言葉の真意ー僕のことを心から心配しての発言だったんだ……と、いうことに気づかされた……。
父さんの言葉がなかったら、僕は……頭ごなしに反対する母さんとはこれ以上、何を話しても無駄だと感じ始めていた……。
お互いに自分の思いを譲らず、相手の思いを聞き入れることも出来ない……こんな状態で分かり合えるなんて……到底、無理だと、どこか諦めた気持ちを抱え、母さんの言葉は無視して、好き勝手にしようとさえ、思っていたから……。
チラッ……と、父さんが僕を見た。
「そうだろ?」
すぐさま、ごちゃまぜになった気持ちを整理すことが出来なくて……僕は戸惑い……ただ、頷くことしか出来なかった……。
「あいつなりによく考えて、そうしようと決めたことなんだ。思うようにさせてやろう。それでもし……仮にも条件が守れないようなら……どんなに本人が嫌がったとしても私達の元へ連れ戻す。それでは、駄目か?」
まだ、何か言いたげな表情を浮かべたまま……母さんはゆっくりと足元を見つめるように俯き、黙り込んでしまった……。