その日の夜。
「なっ、何を考えているんだっ⁉」
リビングに父親の声が響き渡った……。
僕は自宅に帰るなり、僕よりも少し早く帰宅していた父さんと夕食を作り終えた母さんに
『話があるから、聞いてほしい……』と、声をかけてリビングのソファーに座ってもらった。
両親がソファーに腰をかけると同時に僕は土下座をし、訴えた。
「大切な人が退院して、明日……引っ越すんだ。その引っ越し先について行くことを許可して下さいっ!」
そう……伝えた瞬間に父さんから返ってきた言葉だった……。
「引っ越し先について行く……って、お前……」
「本気なの?」
「はい」
僕は土下座したまま、答えた。
「何を馬鹿なことを……」
「そうよ。何を考えているのっ! 大学は⁉ 大学はどうするつもりなの⁉」
ヒステリックな声で母さんが言葉をまくし立てた。
「辞める」
僕はキッパリと言いきった。
「……辞、める……って……」
「辞めて、どうするつもりだ」
「働く」
「働く……って、お前……アルバイトか、何かを考えているなら……」
「就職する」
父親の言葉を遮るように僕は言葉を重ねた。
「引っ越し先で仕事を探して就職する。父さん達には迷惑をかけない。自分の力で暮らしていく」
「話にならない……」
僕は父さんの言葉にカチン……と、きてしまった……。
勢いよく顔を上げて、両親に向かって叫んだ。
「話にならないって、何だよっ! 僕は本気なんだ‼」
『はぁ…』
そんなため息が聞こえてきそうな程……大袈裟に父さんは息を吐いた。
「……まったく……。まだ、学生で社会に出たことがないから世間を知らず……そんな甘っちょろい考えしか出来ないのは仕方がないことだが……それにしてもお前の考えはあまりにもずさんでお粗末すぎだ」
「なっ……」
「大学を中退したヤツにまともな就職先があると本気で思っているのか……? 例え……大学を無事に卒業したとしても、このご時世……まともな就職先が保証されているとは限らんが……中退したヤツよりは多少……マシだろう……。
そういうことも考えての『辞める』なのか?」
「せめて……大学は卒業するべきよ‼ それから、貴方が言うように……大切な人がいる場所で、就職先を見つけてから行っても良いじゃないかしら?」
「それじゃ……遅いんだっ‼ 僕は明日、一緒に行きたいんだっ‼」
「何が、『それじゃ……遅いんだ』だっ‼ 我が儘を言うのも大概にしろっ‼」
「そうよ。この先のこと……冷静になって、よーく考えて」
僕はグッ……と、己の拳を強く握りしめた……。
……我儘……?
冷静になって、よーーく考えて……?
傍から冷静に見れば……そう、かもしれない……。
僕なりによく考えて決断したんだ。
何を言われようとも僕は意思を曲げる気はない。
君に聞いても引っ越し先は分からなかった……。
引っ越し先が分からないのなら尚更……明日、君と一緒に行かないと……愛する君の傍にいられなくなってしまう……。
もう二度と君の行方が分からず、何の手がかりもなく、探し続けるのは嫌だ……。
震災の後……運良く見つけることが出来たけれど…次も君を見つけることが出来る保証なんてどこにもないんだ。
もう離れない……。
もう二度と君を失うなんてイヤだ!!
ずっと、君の傍にいる。
「……じゃ、ない……か……」
「ーーっ……?」
「『後悔しない生き方をしろっ‼』 そう……言ったじゃないか……。僕に父さんは言ったんだ‼」
「ーーっ⁉」
「僕は……今、父さん達にお願いしたことをしないと……きっと……後悔する。そんなの……絶対に嫌だっ‼ 『後悔しない生き方をしろっ‼』……って、言ったのなら……そうさせてよっ‼」
両親は困惑した表情を浮かべてお互いに言葉なく、顔を見合わせた……。
「なっ、何を考えているんだっ⁉」
リビングに父親の声が響き渡った……。
僕は自宅に帰るなり、僕よりも少し早く帰宅していた父さんと夕食を作り終えた母さんに
『話があるから、聞いてほしい……』と、声をかけてリビングのソファーに座ってもらった。
両親がソファーに腰をかけると同時に僕は土下座をし、訴えた。
「大切な人が退院して、明日……引っ越すんだ。その引っ越し先について行くことを許可して下さいっ!」
そう……伝えた瞬間に父さんから返ってきた言葉だった……。
「引っ越し先について行く……って、お前……」
「本気なの?」
「はい」
僕は土下座したまま、答えた。
「何を馬鹿なことを……」
「そうよ。何を考えているのっ! 大学は⁉ 大学はどうするつもりなの⁉」
ヒステリックな声で母さんが言葉をまくし立てた。
「辞める」
僕はキッパリと言いきった。
「……辞、める……って……」
「辞めて、どうするつもりだ」
「働く」
「働く……って、お前……アルバイトか、何かを考えているなら……」
「就職する」
父親の言葉を遮るように僕は言葉を重ねた。
「引っ越し先で仕事を探して就職する。父さん達には迷惑をかけない。自分の力で暮らしていく」
「話にならない……」
僕は父さんの言葉にカチン……と、きてしまった……。
勢いよく顔を上げて、両親に向かって叫んだ。
「話にならないって、何だよっ! 僕は本気なんだ‼」
『はぁ…』
そんなため息が聞こえてきそうな程……大袈裟に父さんは息を吐いた。
「……まったく……。まだ、学生で社会に出たことがないから世間を知らず……そんな甘っちょろい考えしか出来ないのは仕方がないことだが……それにしてもお前の考えはあまりにもずさんでお粗末すぎだ」
「なっ……」
「大学を中退したヤツにまともな就職先があると本気で思っているのか……? 例え……大学を無事に卒業したとしても、このご時世……まともな就職先が保証されているとは限らんが……中退したヤツよりは多少……マシだろう……。
そういうことも考えての『辞める』なのか?」
「せめて……大学は卒業するべきよ‼ それから、貴方が言うように……大切な人がいる場所で、就職先を見つけてから行っても良いじゃないかしら?」
「それじゃ……遅いんだっ‼ 僕は明日、一緒に行きたいんだっ‼」
「何が、『それじゃ……遅いんだ』だっ‼ 我が儘を言うのも大概にしろっ‼」
「そうよ。この先のこと……冷静になって、よーく考えて」
僕はグッ……と、己の拳を強く握りしめた……。
……我儘……?
冷静になって、よーーく考えて……?
傍から冷静に見れば……そう、かもしれない……。
僕なりによく考えて決断したんだ。
何を言われようとも僕は意思を曲げる気はない。
君に聞いても引っ越し先は分からなかった……。
引っ越し先が分からないのなら尚更……明日、君と一緒に行かないと……愛する君の傍にいられなくなってしまう……。
もう二度と君の行方が分からず、何の手がかりもなく、探し続けるのは嫌だ……。
震災の後……運良く見つけることが出来たけれど…次も君を見つけることが出来る保証なんてどこにもないんだ。
もう離れない……。
もう二度と君を失うなんてイヤだ!!
ずっと、君の傍にいる。
「……じゃ、ない……か……」
「ーーっ……?」
「『後悔しない生き方をしろっ‼』 そう……言ったじゃないか……。僕に父さんは言ったんだ‼」
「ーーっ⁉」
「僕は……今、父さん達にお願いしたことをしないと……きっと……後悔する。そんなの……絶対に嫌だっ‼ 『後悔しない生き方をしろっ‼』……って、言ったのなら……そうさせてよっ‼」
両親は困惑した表情を浮かべてお互いに言葉なく、顔を見合わせた……。