「……すまなかった」
「……っ……」
「……君には……娘のことで随分と助けられた……。それなのに……今まで酷い対応をしてすまなかった……」
「ごめんなさい……」
君の両親が深々と頭を下げたんだ……。
「えっ、あのっ……頭をあげてくださいっ……!」
僕は思いもよらぬ状況にまたも驚き、今度は慌ててしまった……。
それは君の両親に頭を下げられる覚えがないから……。
僕は君の傍にいたいがために……君の両親の言葉に従わずに自分勝手にしてきたんだ。
謝るのはむしろ、僕の方だと思う……。
「ぼっ、僕が……心配で……ほっとけなかったから……。今、思えば……僕の行動はとても身勝手で不愉快にされることも多かったと思います……。すいませんでした……」
「何を言っているんだ……。君が謝ることは何もない。少しずつだが目に見えて娘が元気になりつつあるのは君のお陰だ」
「ーーっ……」
「君が初めて娘のお見舞いに来てくれた日から、一日も欠かさず……私達が娘のことを想い、『もう、会わないでほしい……』と、話をした後もどんなに冷たく、酷い態度で私達が君に接しようとも君はずっと病院に通い続けてくれた。娘に会い、優しく声をかけ続けてくれたから……娘は元気を取り戻すことが出来たんだと、思う。そのきっかけを作ってくれたのは……間違いなく、君……だ」
「……っ……」
「君がいてくれたから……娘は自分から食事を摂るようになったし、会話のやり取りも出来るようになった。少しずつだが……以前のような明るく、素直な娘に戻りつつある……と、私達は思っているんだ。君にはとても感謝している」
「……ありがとう……。感謝してもしきれないわ……」
君の母親はうっすらと瞳に涙を滲ませながら呟いた。
「あっ、い……やっ、あのっ……」
君が誰かに向かって言葉を話したのは多分……僕が知る限り……あの時が久しぶりだったと、思う……。
あの時、偶然にもタイミングよく僕が傍にいただけで本当に君が僕に対して言いたかった……伝えたかった言葉だったのかは分からない……。
だって……その真意を知っているのはただ1人……君だけなのだから……。
それに決して僕だけに向けて言いたかった言葉ではないはずだ。
本当は僕なんかよりも先に両親にお礼を言いたかったに違いない……とさえ、思った。
君が母親のお腹に宿ってからずっと絶え間なく愛し、大切に育て、災害で被災した後も半壊した自宅兼お店の片付けをしながら、毎日欠かさず病院に通い続け、傍に寄り添い続けていた両親に僕なんかが敵うわけがない……と、思った……。
「……それで……こんなことを言うのは……すごく調子がいい人達だ……と、思われても仕方のないことだが……君には君自身の人生を生きていってほしい……」
「えっ……」
「娘も落ち着きを取り戻しつつある今……もう、君が毎日、病室へ通い、娘に会って話しかけなくても後は私達だけで娘のケアをしてもなんら問題はない。安心してほしい。これまで娘のために使っていた時間を君自身のために使ってほしいんだよ……」
「そっ、そんな……」
思いがけないことを言われ、僕は戸惑う……。
「こんなことを一方的に言われて……納得がいかず、戸惑う気持ちが湧いて………当然だと思う。けれど…いつまでも娘のことで君の大切な時間を奪ってはいけない…と、私達は思うんだよ」
「気を悪くしないで……。これまで貴方が娘のことを思って、病院に通いつめてくれたこと……本当に感謝しているわ。そう……思うと共にこれ以上……娘のことで君自身が犠牲になってはいけない……。娘は娘の人生を……貴方は貴方の人生を生きていかなきゃ……」
「だから……私達の思いを分かってほしい……今まで本当に……ありがとう」
「ありがとうございました」
再び君の両親が僕に向かって深々と頭を下げた……。
僕はそれ以上、何も言えないまま……ただ、ぼんやりとその光景を目にしていたーー……。
「……っ……」
「……君には……娘のことで随分と助けられた……。それなのに……今まで酷い対応をしてすまなかった……」
「ごめんなさい……」
君の両親が深々と頭を下げたんだ……。
「えっ、あのっ……頭をあげてくださいっ……!」
僕は思いもよらぬ状況にまたも驚き、今度は慌ててしまった……。
それは君の両親に頭を下げられる覚えがないから……。
僕は君の傍にいたいがために……君の両親の言葉に従わずに自分勝手にしてきたんだ。
謝るのはむしろ、僕の方だと思う……。
「ぼっ、僕が……心配で……ほっとけなかったから……。今、思えば……僕の行動はとても身勝手で不愉快にされることも多かったと思います……。すいませんでした……」
「何を言っているんだ……。君が謝ることは何もない。少しずつだが目に見えて娘が元気になりつつあるのは君のお陰だ」
「ーーっ……」
「君が初めて娘のお見舞いに来てくれた日から、一日も欠かさず……私達が娘のことを想い、『もう、会わないでほしい……』と、話をした後もどんなに冷たく、酷い態度で私達が君に接しようとも君はずっと病院に通い続けてくれた。娘に会い、優しく声をかけ続けてくれたから……娘は元気を取り戻すことが出来たんだと、思う。そのきっかけを作ってくれたのは……間違いなく、君……だ」
「……っ……」
「君がいてくれたから……娘は自分から食事を摂るようになったし、会話のやり取りも出来るようになった。少しずつだが……以前のような明るく、素直な娘に戻りつつある……と、私達は思っているんだ。君にはとても感謝している」
「……ありがとう……。感謝してもしきれないわ……」
君の母親はうっすらと瞳に涙を滲ませながら呟いた。
「あっ、い……やっ、あのっ……」
君が誰かに向かって言葉を話したのは多分……僕が知る限り……あの時が久しぶりだったと、思う……。
あの時、偶然にもタイミングよく僕が傍にいただけで本当に君が僕に対して言いたかった……伝えたかった言葉だったのかは分からない……。
だって……その真意を知っているのはただ1人……君だけなのだから……。
それに決して僕だけに向けて言いたかった言葉ではないはずだ。
本当は僕なんかよりも先に両親にお礼を言いたかったに違いない……とさえ、思った。
君が母親のお腹に宿ってからずっと絶え間なく愛し、大切に育て、災害で被災した後も半壊した自宅兼お店の片付けをしながら、毎日欠かさず病院に通い続け、傍に寄り添い続けていた両親に僕なんかが敵うわけがない……と、思った……。
「……それで……こんなことを言うのは……すごく調子がいい人達だ……と、思われても仕方のないことだが……君には君自身の人生を生きていってほしい……」
「えっ……」
「娘も落ち着きを取り戻しつつある今……もう、君が毎日、病室へ通い、娘に会って話しかけなくても後は私達だけで娘のケアをしてもなんら問題はない。安心してほしい。これまで娘のために使っていた時間を君自身のために使ってほしいんだよ……」
「そっ、そんな……」
思いがけないことを言われ、僕は戸惑う……。
「こんなことを一方的に言われて……納得がいかず、戸惑う気持ちが湧いて………当然だと思う。けれど…いつまでも娘のことで君の大切な時間を奪ってはいけない…と、私達は思うんだよ」
「気を悪くしないで……。これまで貴方が娘のことを思って、病院に通いつめてくれたこと……本当に感謝しているわ。そう……思うと共にこれ以上……娘のことで君自身が犠牲になってはいけない……。娘は娘の人生を……貴方は貴方の人生を生きていかなきゃ……」
「だから……私達の思いを分かってほしい……今まで本当に……ありがとう」
「ありがとうございました」
再び君の両親が僕に向かって深々と頭を下げた……。
僕はそれ以上、何も言えないまま……ただ、ぼんやりとその光景を目にしていたーー……。