数週間後。

まだ被害のひどかった地区は手が足りずに手つかずの状態の場所もあるけれど……ある程度、生活してゆくためのライフライン整備は整いつつあった。
それはとてもゆっくりだけど……確実に一歩、また一歩と復興の兆しを見せていた。
僕は休学届けを出していた大学に復学し、日々、勉学に明け暮れる中でも君の元へと通い続けた。
時に君の好物のプリンや君が好きなピンク色のデイジーの花束を抱えて……。
その日も大学の授業を終えて、足早に君の元へと向かっていた。
危ないと分かっていながら、僕は君が入院している階にエレベーターが停まって扉が開ききる前に降り始める。
それは一分、一秒が惜しくてムダにしたくなかった……。
エレベーターから降りた瞬間……待ち伏せていたかのように君の父親が立っていた。
「この階にある談話室に来てくれないか……」
目を合わせることなく、一方的にそう、告げると君の父親はスタスタ……と、談話室に向かって歩いていってしまったーー……。