その日を境に……
君は「おはよう」・「さよなら」の挨拶をしてくれるようになった。
食事も少しずつ…(じぶん)から摂るようになっていった。
それまでは点滴や高カロリードリンクを医者や看護師、君の両親の声かけでなんとか少しでも摂取出来ればいい方だった……。
次第に口数が増え、焦点の合わなかった瞳に生気が戻り始めて、ほんの少しだけ……微笑むようにもなっていった。
その微笑みはまだまだぎこちなかったけれど……泣く時以外は表情を失い、まるで人形のような君の姿を見ていたから……君の微笑みを見る度に
『君は生きている……』
『生身の人間なんだ……』と、実感した。
君が精神的に安定してくると共に……突然、大粒の涙を流して泣き出し、全身を震わせ、怯えることも少なくなっていった……。
君の些細な変化がすごく嬉しくて、それが僕の励みにもなっていたんだーー……。