その後。
 
僕は君の病室を訪れることなく、そのまま……自宅(いえ)に帰った……。
正確には……帰るしか、なかった……。
正直、どんな表情(かお)をして君に逢えばいいのか、分からなかった……と、いう理由もあるけど、何より君の父親が話が終わってからもずーっと僕が病院を出て、最寄りのバス停でバスに乗るまでぴったりと側にいたから……。
それはまるで……罪人を監視しているかの如く、鋭くて冷ややかな瞳を向けられ、
『絶対に何が何でも娘と面会はさせない…』と、いう強い意志に溢れていた……。
その時の僕はそんな君の父親の想いに楯突く(・・・)程、強くはなかったんだーー……。