君と再会して5日目のこと。
「もう……娘に関わらないでほしい……」
僕が院内に入った瞬間……君の父親に「話がある」と、声をかけられ、談話室で紡がれた一言だった……。
僕は一瞬、何を言われたのか……分からなかった……。
「えっ……ど、うして……?」
意味が分からない……。
僕は君の両親の気に障るようなことをしたのだろうか……?
何度も同じ問いが頭の中を駆け巡っていた……。
「……フラッシュバック……を起こしてる……そうだ」
君の父親は真剣な眼差しで僕を見つめて言った……。
その瞳は憂いを帯びていて僕の胸がチクッ……と、痛んだ……。
「……言葉、くらい……聞いたことがあるだろう……?」
僕は言葉なく、頷いた……。
フラッシュバック……。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)。
過去に強いトラウマ体験(心的外傷)をした場合にその時の嫌な記憶が、後々になって鮮明に思い出されること……。
また、同じような夢を見てしまったりすると、いう……。
……なんとなくだけど、君の様子を見ていて頭の片隅で思ったことはあった……。
けれど……君の両親は今日まで何も言ってくれなかったし……
まさか、身近な君がそのような病状を抱えて苦しむなんて……考えたこともなかったし、考えたくもなかった……。
「知っているのなら、話は早い。娘は……震災が起きた日……娘の目の前で起きたことがトラウマとなって……苦しみ続けている……。震災が起きた日…君ではないもう1人の同級生が娘を助けるために亡くなったことは知っているかい……?」
「えっ……」
頭を殴られたような衝撃が走った……。
「その様子だと知らなかったみたいだね」
コクッ……と、小さく僕は頷いた……。
「直後、娘から聞いたわけではないんだよ。震災が起きた日、偶然、娘の側にいた人が救急隊員に説明してくれたことをその隊員から聞いたことなんだがね……話しても大丈夫かい?」
「あっ、はい。お願いします」
そう、念をおして聞かれたのは……多分、さっきの僕の態度がとても心配させるものだったのだろう……。
僕は知りたいけど、知りたくない感情が入り交ざった……。
「震災が起きた日、娘はその同級生と出かけていたようで、地震が起きた時は野外にいた。そこで、高いビルの屋上に設置されていた看板が人々のいる歩道に向かって落ちてきたそうだ。そして……その同級生は娘を庇って……」
君の父親が言葉を詰まらせた……。
最後まで言わなくても震災が起きた日、君の目の前で何が起こったのか、ようやく分かった……。
そう、だったのか……。
だから、君は……。
「君は……娘と震災で亡くなられた同級生の3人はとても仲が良かったね……。高校の頃……ずっと、一緒に過ごしていただろう……」
頷くしか、なかった……。
「震災が起きた日……目の前で起きたことを思い出すきっかけになり兼ねない君を……正直、いつまでも娘の傍にいさせたくはないんだ……。私達はもうこれ以上……娘が苦しむ姿を見たくないんだよ……。
申し訳ないが……娘のことを心配して、毎日……病院に通って来てくれている君に対して随分と勝手なことを言い、それによって……不快な思いも抱かせていることも承知の上で話をさせてもらた……」
君の父親が一度言葉を切り、さらに真剣な瞳で僕を見つめた……。
「娘のことを…大切な友人の1人…と、思ってくれているのであれば……尚更……もう、病院には来ないでほしい……」
「ーーっ……」
「……分かって……ほしい……」
君の父親の表情は……とても哀しげでやるせない思いが溢れていた…と、同時に娘のことを大切に想っている気持ちがひしひしと伝わってきた……。
僕は心の中に抱いている想いを今、言葉にして君の父親に伝えてはいけない……と感じとり、グッと掌を握りしめ、唇を噛んだーー……。
「もう……娘に関わらないでほしい……」
僕が院内に入った瞬間……君の父親に「話がある」と、声をかけられ、談話室で紡がれた一言だった……。
僕は一瞬、何を言われたのか……分からなかった……。
「えっ……ど、うして……?」
意味が分からない……。
僕は君の両親の気に障るようなことをしたのだろうか……?
何度も同じ問いが頭の中を駆け巡っていた……。
「……フラッシュバック……を起こしてる……そうだ」
君の父親は真剣な眼差しで僕を見つめて言った……。
その瞳は憂いを帯びていて僕の胸がチクッ……と、痛んだ……。
「……言葉、くらい……聞いたことがあるだろう……?」
僕は言葉なく、頷いた……。
フラッシュバック……。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)。
過去に強いトラウマ体験(心的外傷)をした場合にその時の嫌な記憶が、後々になって鮮明に思い出されること……。
また、同じような夢を見てしまったりすると、いう……。
……なんとなくだけど、君の様子を見ていて頭の片隅で思ったことはあった……。
けれど……君の両親は今日まで何も言ってくれなかったし……
まさか、身近な君がそのような病状を抱えて苦しむなんて……考えたこともなかったし、考えたくもなかった……。
「知っているのなら、話は早い。娘は……震災が起きた日……娘の目の前で起きたことがトラウマとなって……苦しみ続けている……。震災が起きた日…君ではないもう1人の同級生が娘を助けるために亡くなったことは知っているかい……?」
「えっ……」
頭を殴られたような衝撃が走った……。
「その様子だと知らなかったみたいだね」
コクッ……と、小さく僕は頷いた……。
「直後、娘から聞いたわけではないんだよ。震災が起きた日、偶然、娘の側にいた人が救急隊員に説明してくれたことをその隊員から聞いたことなんだがね……話しても大丈夫かい?」
「あっ、はい。お願いします」
そう、念をおして聞かれたのは……多分、さっきの僕の態度がとても心配させるものだったのだろう……。
僕は知りたいけど、知りたくない感情が入り交ざった……。
「震災が起きた日、娘はその同級生と出かけていたようで、地震が起きた時は野外にいた。そこで、高いビルの屋上に設置されていた看板が人々のいる歩道に向かって落ちてきたそうだ。そして……その同級生は娘を庇って……」
君の父親が言葉を詰まらせた……。
最後まで言わなくても震災が起きた日、君の目の前で何が起こったのか、ようやく分かった……。
そう、だったのか……。
だから、君は……。
「君は……娘と震災で亡くなられた同級生の3人はとても仲が良かったね……。高校の頃……ずっと、一緒に過ごしていただろう……」
頷くしか、なかった……。
「震災が起きた日……目の前で起きたことを思い出すきっかけになり兼ねない君を……正直、いつまでも娘の傍にいさせたくはないんだ……。私達はもうこれ以上……娘が苦しむ姿を見たくないんだよ……。
申し訳ないが……娘のことを心配して、毎日……病院に通って来てくれている君に対して随分と勝手なことを言い、それによって……不快な思いも抱かせていることも承知の上で話をさせてもらた……」
君の父親が一度言葉を切り、さらに真剣な瞳で僕を見つめた……。
「娘のことを…大切な友人の1人…と、思ってくれているのであれば……尚更……もう、病院には来ないでほしい……」
「ーーっ……」
「……分かって……ほしい……」
君の父親の表情は……とても哀しげでやるせない思いが溢れていた…と、同時に娘のことを大切に想っている気持ちがひしひしと伝わってきた……。
僕は心の中に抱いている想いを今、言葉にして君の父親に伝えてはいけない……と感じとり、グッと掌を握りしめ、唇を噛んだーー……。