「はい」
僕は木製の長方形のセンターテーブルに白色のシンプルなマグカップを2つ静かに置いた。
「ありがとう」
薄灰色(ライトグレー)のソファーに背を預けて、ラグの敷いた床に両膝を立てて座り、本を読んでいた君が視線を上げて、微笑む。
「面白い?」
「とても」
「そう。それは良かった」
僕は君と会話を交わしながら、君の隣へと腰を下ろした。
君はキリのいいところまで読み進めると薄桃色の栞を挟んでからゆっくりと本を閉じて、センターテーブルの端に置いた。
そのまま手を横に動かし、今しがた僕が置いたマグカップを手にとって口元近くへと運んだ。
2、3度、息を吹きかけてカップ内のミルクティーを冷ました。
君がミルクティーに息を吹きかけるとさらに部屋の中に紅茶の香りにミルクが溶け合った優しい香りが広かった。
そーっと、君はカップの淵に唇をあててゆっくりとカップを傾けた。
一口……。
紅茶を口にした君はホッとしたような表情(かお)を浮かべた後……
「美味しい……」と、小さく呟き、柔らかな春の日差しのような微笑みを僕に向けて「ありがとう」と、2度目のお礼を口にした。
君の微笑みに僕はほわっと、心があったかくなった……。
コクッと、頷いてから僕も一口ミルクティーを口にした。
すると君はカップを両手で大切そうに包みこんで、僕の肩に頭を寄せて身体(からだ)を預けた。
ふわっ…と、微かに鼻腔をくすぐる甘いフローラのシャンプーの香り。
布越しに預けられた身体(からだ)から感じる体温(ぬくもり)に君の存在をさらに身近に感じて、僕の心はさらにあったかくなり、安らぎを感じた。
それから……言葉はなく、ただ……ゆっくりと時間が流れていく……。
君と僕。
2人だけの時間……。
幸福(しあわせ)、だ……。
何気ない日常の一コマにしか、すぎない……。
そんな些細な時間さえも僕にとっては君と過ごす一瞬、一瞬はどれも大切でかけがえのないものばかりなんだ。
君の傍に……
君を心から愛し、君の愛する人としていられることが幸福(しあわせ)でたまらない……。
このまま……ずっと、君との幸福(しあわせ)が続くことを僕は心の底から願ってる。
ねぇ……君、は……?