君の自宅兼お店は半壊していて、散乱した店内を君の両親が片づけていた……。
僕は目を凝らして、君がいることを願いながら隅々までよーーく店内を見回してゆく。
……いない。
……君の姿は……店内のどこにも見えなかった……。
店内にはいないけれど、もしかしたら自宅の方にいるのかも……。
いやいや、出かけていてここにはいない可能性だって、まだ、ある……。
どうしよう……。
君がここにいるのか、いないのか……。
無事なのか……。
いますぐにでも君の両親に声をかけて、確かめたい……と、いう思いはあるものの、そうできない理由が僕にはあった……。
それは君と君の愛する人が付き合いだしてからというもの……僕は徐々にお店に通う回数を減らしていき、ある時を境にパタリと行かなくなったからだ。
それまでの僕は少しでも長く君の傍にいて一緒を過ごしたい……。
些細な会話を楽しみたかったから学校帰りに君のお店のパンが美味しいから買いたい……と、君を自宅兼お店まで送ったり、休日でも君に逢うためにパンを買いに行ったり……と、何かしらの口実を作っては君に逢いに行っていたんだ。
ちょくちょく君の自宅兼お店に通い続けていると……自然と君の両親とも話をするようになって、時に僕が一番好きなクリームパンをこっそりとおまけして入れてくれるようにもなった。
君の友達ということもあったのだろうけど、君の両親はとてもよくしてもらった。それにもかかわらず……僕はその関係をバッサリと切ったんだ……。
あの頃……僕がもっと精神的に大人だったら……
君と君の愛する人が付き合っていても気にすることなく、もっと上手に君や君の両親との交流を続けていたら……
こんなにも躊躇うことなく、すぐさま君の両親に声をかけて君のことを聞けたのに……。
僕はどうするべきなのだろう……。
自宅兼お店から少し離れた場所だけど……店内からは人がいることが分かるほどの距離で僕が思案していると不意に……。
「きっ、君っ!」
君の父親が僕が外にいることに気がつき、慌てて店内から飛び出してきて、僕の両肩をガシッと、力強く掴んだ……。
その衝撃に身体が揺れた……。
君の母親も君の父親がお店から飛び出してゆく姿を目にした途端……すぐにその後を追ってやってきて父親の少し後ろに立つと、両親が僕を真剣な眼差しで見つめた。
「娘はっ…娘は無事、なのかっ!?」
君の両親から声をかけてくるとは思ってなかったから……僕はとても驚いて、言葉を口にすることができなかった……。
「どうなんだっ!?」
君の両親は切実な表情で僕のことを一心に見つめ続けて、切羽詰まった声で次々と言葉を形にして問いつめる……。
「娘が無事なのか、どうかを聞いてるんだっ!」
「何でもいい……。娘のことで……貴方が知っていることがあるのなら……教えてほしいのっ……!!」
「頼むっ!!」
必死に懇願する君の両親の姿に胸が痛み、返答に窮する……。
両親が望んでいる問いの答えを僕は持ち合わせていなかったから……。
と、同時に……落胆してしまった……。
1つの可能性に過ぎなかったけれど……君が自宅兼お店にいると
いや、むしろ自宅兼お店にいてほしい……。
そう、心の片隅で祈りながら懸命に歩いても来たから……。
僕の願いは両親の言葉を耳にして儚くも消え去った……。
言葉なく、僕はスーーッと視線を両親からそらし……足元を見つめた……。
僕が取った行動で僕が言わんとする言葉が、君の両親に伝わったらしく……君の父親は僕の肩から手を離し、僕と少し距離を取った……。
「……悪かったな、いきなり……」
「……ホント……ごめんなさいね。娘と仲良くしてもらっていたから……何か、知ってるかもしれない……と、思ってしまったの……」
君の両親が申し訳なさそうに言葉を口にした……。
「あっ、いえ……。僕の方こそ……突然……」
「貴方が謝ることはないのよ。ところで……どうして、ここに?」
「あっ……えっと、連絡が取れなくて……心配になって……」
「君も、か……」
「えっ……」
「私達も娘と連絡が全く取れないんだ……。連絡が取れないのは……もしかしたら……震災の影響で通信障害が起きているのかもしれないな……」
「娘……午前中に「出かけてくる」と、言っただけ……。1人きりで出かけてるのか、誰かと待ち合わせをして、遊んでいるのか……全然分からないのよ……」
「どこで何をしているのか、無事なのか……探しに行きたいが手がかりがなにもなくてね……。情けないものだよ……。安易に探し回って、娘とすれ違いになっても困るから……今日のところは……自宅兼お店で帰りを待つと家内と決めたんだ……」
「無事でいてくれたら……良いのだけど……」
平常心を保ちつつも……君の両親の表情はとても心配そうで、何とも苦しげで……君のことを心底心配していることがよく分かった……。
僕は君の両親に深々と頭を下げ、さよならの挨拶を告げてから、その場を去ったーー……。
僕は目を凝らして、君がいることを願いながら隅々までよーーく店内を見回してゆく。
……いない。
……君の姿は……店内のどこにも見えなかった……。
店内にはいないけれど、もしかしたら自宅の方にいるのかも……。
いやいや、出かけていてここにはいない可能性だって、まだ、ある……。
どうしよう……。
君がここにいるのか、いないのか……。
無事なのか……。
いますぐにでも君の両親に声をかけて、確かめたい……と、いう思いはあるものの、そうできない理由が僕にはあった……。
それは君と君の愛する人が付き合いだしてからというもの……僕は徐々にお店に通う回数を減らしていき、ある時を境にパタリと行かなくなったからだ。
それまでの僕は少しでも長く君の傍にいて一緒を過ごしたい……。
些細な会話を楽しみたかったから学校帰りに君のお店のパンが美味しいから買いたい……と、君を自宅兼お店まで送ったり、休日でも君に逢うためにパンを買いに行ったり……と、何かしらの口実を作っては君に逢いに行っていたんだ。
ちょくちょく君の自宅兼お店に通い続けていると……自然と君の両親とも話をするようになって、時に僕が一番好きなクリームパンをこっそりとおまけして入れてくれるようにもなった。
君の友達ということもあったのだろうけど、君の両親はとてもよくしてもらった。それにもかかわらず……僕はその関係をバッサリと切ったんだ……。
あの頃……僕がもっと精神的に大人だったら……
君と君の愛する人が付き合っていても気にすることなく、もっと上手に君や君の両親との交流を続けていたら……
こんなにも躊躇うことなく、すぐさま君の両親に声をかけて君のことを聞けたのに……。
僕はどうするべきなのだろう……。
自宅兼お店から少し離れた場所だけど……店内からは人がいることが分かるほどの距離で僕が思案していると不意に……。
「きっ、君っ!」
君の父親が僕が外にいることに気がつき、慌てて店内から飛び出してきて、僕の両肩をガシッと、力強く掴んだ……。
その衝撃に身体が揺れた……。
君の母親も君の父親がお店から飛び出してゆく姿を目にした途端……すぐにその後を追ってやってきて父親の少し後ろに立つと、両親が僕を真剣な眼差しで見つめた。
「娘はっ…娘は無事、なのかっ!?」
君の両親から声をかけてくるとは思ってなかったから……僕はとても驚いて、言葉を口にすることができなかった……。
「どうなんだっ!?」
君の両親は切実な表情で僕のことを一心に見つめ続けて、切羽詰まった声で次々と言葉を形にして問いつめる……。
「娘が無事なのか、どうかを聞いてるんだっ!」
「何でもいい……。娘のことで……貴方が知っていることがあるのなら……教えてほしいのっ……!!」
「頼むっ!!」
必死に懇願する君の両親の姿に胸が痛み、返答に窮する……。
両親が望んでいる問いの答えを僕は持ち合わせていなかったから……。
と、同時に……落胆してしまった……。
1つの可能性に過ぎなかったけれど……君が自宅兼お店にいると
いや、むしろ自宅兼お店にいてほしい……。
そう、心の片隅で祈りながら懸命に歩いても来たから……。
僕の願いは両親の言葉を耳にして儚くも消え去った……。
言葉なく、僕はスーーッと視線を両親からそらし……足元を見つめた……。
僕が取った行動で僕が言わんとする言葉が、君の両親に伝わったらしく……君の父親は僕の肩から手を離し、僕と少し距離を取った……。
「……悪かったな、いきなり……」
「……ホント……ごめんなさいね。娘と仲良くしてもらっていたから……何か、知ってるかもしれない……と、思ってしまったの……」
君の両親が申し訳なさそうに言葉を口にした……。
「あっ、いえ……。僕の方こそ……突然……」
「貴方が謝ることはないのよ。ところで……どうして、ここに?」
「あっ……えっと、連絡が取れなくて……心配になって……」
「君も、か……」
「えっ……」
「私達も娘と連絡が全く取れないんだ……。連絡が取れないのは……もしかしたら……震災の影響で通信障害が起きているのかもしれないな……」
「娘……午前中に「出かけてくる」と、言っただけ……。1人きりで出かけてるのか、誰かと待ち合わせをして、遊んでいるのか……全然分からないのよ……」
「どこで何をしているのか、無事なのか……探しに行きたいが手がかりがなにもなくてね……。情けないものだよ……。安易に探し回って、娘とすれ違いになっても困るから……今日のところは……自宅兼お店で帰りを待つと家内と決めたんだ……」
「無事でいてくれたら……良いのだけど……」
平常心を保ちつつも……君の両親の表情はとても心配そうで、何とも苦しげで……君のことを心底心配していることがよく分かった……。
僕は君の両親に深々と頭を下げ、さよならの挨拶を告げてから、その場を去ったーー……。