数日後。

 放課後に私は一人で花壇の手入れをしていた。

 これも美化委員の仕事だ。


 一年生の時は嫌々やっていた美化委員も、慣れてくるとやりがいも出てきた。

 だから二年生になった今も続けている。

 たぶん三年生になっても立候補すると思う。



 その時、突然目の前に何かが落ちてきた。


 ガシャン!


「きゃっ!」


 大きな音とともに、ガラスの破片が飛び散る。


「な、なに?」


 周囲にガラスの破片と、花壇のものではない花が落ちていた。

 どうやら上からガラスの花瓶が落ちてきたらしい。

 花壇のふちに当たって砕けたようだ。

 とっさに上を見上げる。


 しかし、誰もいない。


 ちょうど、上の階には私のクラスがあった。

 時間も経ってるし、みんな帰ってる頃だと思うけど。

 あたりを見回すも、周囲には誰もいない。


「ビックリしたぁ。ど、どうしよう……」


 呆然としながら、しばらく割れたガラスの破片を一人で眺めていると。


「カホー!」


 サヤカがビックリした顔で走ってきた。

 かなり息を切らしている。


「大丈夫? カホ」

「サヤカ………」

「カホ!? なに、何があったの!?」

「んと、うぅ」


 サヤカの顔を見て緊張の糸が切れたのか、私は腰が抜けてしまった。

 地面にへたり込んでる私を見て、サヤカは泣きそうな顔になっている。


「大丈夫? カホ……」

「急に……これが、落ちてきて……」


 私は震えた声で説明し、割れたガラスの破片を指差した。


「ええ!? なんで花瓶が!? 大丈夫! ケガは?」

「ない……」

「そっか、よかったぁ」


 サヤカは泣きそうになりながら、私のことを抱きしめてくれた。


「怖かった……」

「うんうん、危なかったね……」


 その後、しばらくして落ち着いた私たちは職員室へ行き、先生たちに報告した。


 結局、花瓶が落ちた原因はわからなかった。

 風が吹いて落ちるようなものでもないため、かなり不信感があるが。

 先生たちは調査すると言ってくれたけど、どこまであてになるかはわからない……。