「私が仕組んだって……何を?」


 サヤカは信じられないといった顔でこちらを見ている。


「先輩たちを呼んだの、サヤカでしょ。わかってるよ。私が憎いんだよね。めちゃくちゃにしたかったんでしょ」

「な……そんなわけないじゃん、私だって縛られてるんだよ?」

「それは、自分も縛られることで共謀したことがバレないようにしてたんでしょ?」


 後ろで手を縛られてる恰好のまま、サヤカは地面に這いつくばり私を見上げている。

 私はタクマくんに拘束を解いてもらい、彼女を見下ろしていた。


「ねえ、サヤカ。花瓶落としたのも、サヤカだもんね」

「あ、あれは……!」

「私を殺すつもりでやったの?」

「違うよ、殺すつもりなんてないよ?」

「でも、当たったら死ぬじゃん」

「当てるつもりはなかったんだって。ちょっとおどかすつもりで……」

「ふん。まあ、バレバレだったけどね」

「え……」

「だって、駆けつけてきた時、サヤカこう言ったじゃん」


 なんで花瓶が!?


「普通、ガラスが散らばってたら、最初は窓ガラスが割れて落ちてきたのかって思うよね」


 私のたんたんとした言葉を聞いて、サヤカは挙動不審ぎみにつぶやく。


「え、え……でも、花が……落ちてたし……」

「たしかにそばには生けてあった花も落ちてたけど、花壇の花と紛れちゃってたから花瓶の花だとは普通は思わないんじゃないかな」

「待って、それは本当に悪かった……。でもこれは違うの! 本当に私が仕組んだことじゃないの!」

「最低だよ。サヤカ」

「カホ……」


 サヤカは絶望に満ちたまなざしを、今度はタクマくんに向ける。


「西之谷くん……信じて、あたしは先輩たちとは無関係なの!」

「お前さ、それは無理があるって……カホ、もう行こう」

「待って! 信じて! 置いてかないで!」


 私とタクマくんは、体育倉庫の扉をしめて外へ出た。


 その後、私たちは職員室に駆け込んで事情を話した。

 体育倉庫へ駆けつけた先生たちによって、サヤカと先輩たちは発見され事情をきかれたらしい。

 後日聞いた話では、全員退学処分になるそうだ。



 教室からサヤカがいなくなっても、特に変わりはなかった。

 最初のころはクラスの中心だったサヤカも、性格の悪さがバレ始めてだんだん相手をする人はいなくなっていった。

 だから、サヤカも私とつるむしかなかったわけで、別に私のことをとても想ってくれていたわけではない。

 まあでも、サヤカがいなくなったことで、お昼をいっしょに食べる人はいなくなってしまった。



 でも、代わりに彼氏ができたことで、これからは今までよりも楽しい学校生活になりそうだ。


 ちょうどその時、彼が私を探しに教室へとやってきた。

 放課後、残っていた女子たちが、いっせいに彼の方へ視線を向ける。


「カホ! 今日は部活休みだから、いっしょに帰ろ」

「タクマくん! もうっ、恥ずかしいから教室まで来ないで!」