「一度も染めたことのない、綺麗な髪。」

そしてスルリと撫でられた。

何、この感覚。

「俺がアレンジしたい。」

まあ、髪を褒められて悪い気はしないけど。

「長さは変えないし、それにカットモデルしてくれたらいろいろもらえるよ、シャンプーやコスメの試供品とか。」

…試供品。

私は一人暮らしで毎月結構な出費がある。

家賃に光熱費、食費。

そして給料は三割は貯金、あとは好きな本やCDを買うために使ってる。

同世代の子たちみたいに新しいコスメや最新の服なんかにはあまり興味がないから、ただでそういうものをもらえるのはかなりありがたい。

化粧は社会人としてのたしなみだからしざるを得ないし。

結構高いのよね、コスメ。

まあ、悪い条件じゃない。

それにちょうどそろそろ美容室に行かなきゃって思ってたから、こいつにただで切ってもらえるなら一石二鳥だ。

まあ新人とはいえ、一応プロなんだから変にはならないでしょ。

「…わかった。」