エレベーターの扉が開く。

暗闇の中で、なにかいる。

…うわ、ほんとに待ってたんだ。

これって軽く、ストーキング。

しかも堂々とオフィスの前で寝てるし。

「バカじゃない…」

近づいてみてもちっとも起きる気配もない。

寝顔は案外かわいいかも。

って、私何考えてんの。

「起きて。」

肩を揺すると目を開けた。

「…ん、環ちゃん…?」

「もう終電もないのに。何やってるのよ。」

すると急に腕を掴まれ、座ったまま引き込まれた。

「環ちゃん…本物だ!」

な、に、やってんのよ!

「離せっ…」

「わっ、ごめん!」

たく、ちょっと調子に乗るとこうなんだから。

「で、話って何?早く済ませてよ。」

するとやつはニコーっと笑った。

なんだか胡散臭い笑顔。

「俺、環ちゃんに頼みたいことがあるんだ!」

頼みたいこと?

「この前のお礼なら約束通り、デートしてあげたでしょ。」