それは私にもさっぱりわからない。

こいつと出会ったのは数ヶ月前、入社したばかりの私はその日も夜遅く、ようやく仕事を終えてヘトヘトになってビルのエレベーターに乗った。

そこで途中に乗ってきたのが吉崎流星。

「君、上のオフィスの新入社員?」

にこやかに馴れ馴れしく話しかけてきたそいつに、まずはじめに感じたのは嫌悪感。

私は中学からすみれが丘女学院という女子校育ち。

もちろん、友達の中には彼氏がいる、なんて子もいた。

だけど私は中、高と部活の吹奏楽部に没頭、引退してからは外部受験をするために猛勉強。

男の人と関わることなんて、ほとんどなかった。

でも特にその生活に不満を持っていたわけではない。

吹奏楽部では大好きな仲間と大好きな音楽を出来るのが楽しくて。

担当楽器のコントラバスも好きだったし、部長という役割もあり、ますます練習に励んだ。

三年の夏、引退してからは薬品メーカーで開発職を目指したいと思い、県内にある国立に行くことに決めた。