ツンと鼻をつく、薬品の匂い。

肌に触る、懐かしい白衣の感触。

この少し息苦しいマスクの感覚さえ心地いい。

「久住さん、楽しそうだね。」

川澄先輩がマスク越しからでもわかるくらいの爽やかスマイルで微笑む。

「はい、大学時代、研究室にこもってることが多かったので。」

もともと研究室志望だったんだよね。

一番好きだったのは理科の実験だったしね。

「ここで研究されてる新薬を企画開発部で検討するんだよ。」

へえ。

じゃあ新薬開発にも関われるのかな。

楽しみ!

「じゃあそろそろ行こうか。」

「はい!」

研究室から出て、いつの間に買ってきたのか、川澄先輩が私の横に缶のミルクティーを置いた。

「これでよかった?」

「ありがとうございます。」

でも私がコーヒーよりミルクティーが好きなこと、よくわかったな。

偶然なのかな?

「久住さん、コーヒーよりこっちで良かったんだよね?いつも飲んでるから…」