髪の毛も一度も染めたことがない。

そんな私は良く、大学時代には

「真面目」

「インテリ女子」

なんて言われていた。

これはきっと、褒めているわけじゃない。

でもいい。

だってそれが当たり前で、ずっとやってきたんだから。

だからこそ、最近のあいつに、ウンザリする。

あいつとは…

「あっ、環ちゃんじゃん!おっはよー!今日早いね!」

げっ!

でた!

私はそいつを見もせずにスルー。

「あれ?無視?ひどいなー。俺、傷ついちゃう!」

手に持っている箒を振り回しながらヘラヘラ笑うこいつは私の務める薬品会社、四葉薬品の開発企画部があるこのビルのオフィスの下にあるヘアサロンで働く美容師、吉崎流星。

明るく染められ、セットされた髪に耳に付いているピアス。

私は男の子のおしゃれとかよくわかんないから、それをセンスがいいというらしいファッション。

「環ちゃーん!」

なんでこんな奴が私にかまってくるのかって。