中野 春という女の子と出会ったのは、入社面接のとき。
緊張を超え殺伐とした雰囲気の中で、凛と座っている姿に思わず目を惹かれた。
膝の上で手を重ね合わせ静かに瞳を閉じて名前が呼ばれるのを待つ姿からは、同い年のわらわらと群がる女性への偏見からはかけ離れていて、自然と気になった。
それなのに、自分の名前が呼ばれた時には肩を揺らし、頬を真っ赤にして面接室へ向かっていったものだから、そのギャップにまた好奇心をくすぐられた。
面接通過後、俺はインターン時の実績から本社配属となった。
そして就業後すぐに共有フォルダの配属表からあのとき面接官が呼んでいた名前を探し出し、支店を特定した。
「…ふーん」
本社には劣るけれど、中々大きい支店に配属したようで、それなりの実力は兼ね備えているらしい。
それまでの薄っすらとした興味からはっきりとした執着へ変わったのは、それから3ヶ月後の本社研修での出来事だった。