「優聖が、私と付き合ってくれたのが奇跡みたいなの」



「うん」



「…だからこそ、私でいいのかなとか、不安になっちゃって…」





こんな面倒なことを言ったら嫌われてしまうかもしれない。




付き合っているんだからそれが答えだろうと、前の彼氏には言われた。




その時に、この不安に向き合ってくれない彼に対しての私は、それくらいの存在価値なのだと知った。




こうして自己肯定感と彼氏を失って半年経った頃に、優聖と出会った。




本社からの異動、それも栄転で役職を携えて今の支店に来た彼は、その経歴と容姿から女性の視線を総動員していた。




憧れを持つのは、私も例外ではなかった。




とある出来事を通して、彼は私の担当営業となり、事あるごとに助けてくれるようになったのが距離を縮めるきっかけになった。




告白したのは私から。好きになったのも私から。




私だけが、優聖のことを好きすぎて、失いたくなくて——。





「春、こっち見て」



「……うん」



「俺の目、見て」



「…見てるよ」



「じゃあ春しか映してないの、分かるんじゃないかな?」





じっと見つめられると頬に熱が集中してしまうけれど、それ以上に熱を持った瞳が私だけを映している事実に、不安に感じていた事自体が間違いに思えてくる。





「…ありがとう、優聖。ごめんね、変なこと言って」



「んー…まあ、ちょっと心外だったかなぁ」



「え?…わっ!」





視界が突如反転して、気がついたら優聖の上に乗っかる形でベッドに倒れ込んでいた。





「ゆ、優聖!待って、重いからっ、あと危ないよ…!」



「危ないのは春の方だよ」



「…え?」



「さっきのって、俺以外の誰のことを、考えてたんじゃないのかな?」



「…!」



「そこが心外。それに、俺以外を見てるのも、危ないよ?」



「—っ」