「ん…篠宮さ…」
「…ねぇ春、ここ、ベッドの上だよ?」
「………優聖」
指摘されたことと名前で呼ぶことへの恥ずかしさから、消え入りそうな声で訂正する。
仕事終わりは大抵お家にお邪魔させてもらっていて、付き合って半年だけれどほぼ半同棲状態になってしまっている。
家に入ると同時にキスが降り、気がつけばベッドの上にいて、恋人の時間を過ごしている。
半年前までには、こんな幸せな生活は考えられなかった。
だからこそ、今の幸せが不安の要素を増やして加速させていく。
息継ぎの間にそんなことを思ってしまい、そっと目を逸らして視線を彷徨わせてしまう。
「どうかした?」
「…あ、ううん。何でもない…」
「…何かは、あるんじゃないのかな?」
その言葉をかけられると、部屋の中を所在なく映していた視界が優聖さんだけをとらえるようになり、瞳から思考が筒抜けになっていることを何故か感じとる。
「…ある」
「ふふ。そうなんだ。…例えば?」
たまたま当たったみたいに振る舞ってくれるおかげで、誤魔化してしまった後ろめたさが彼の茶目っ気で中和される。
柔らかくなった雰囲気に作用されて、今度は口が自動的に話し始めた。