変化
✱
高校1年の夏もあっという間に過ぎ、
新学期が始まろうとしていた。
うわっ…教室のドアを開けるなり私_鈴乃茜音(すずのあかね)は顔をしかめる。
私の席がクラスの、いわゆる陽キャという人に独占されていた。
私は一度深呼吸をし、その陽キャたちに話しかける。
「…あの、そこ私の席なんですけど」
陽キャたちは一瞬びっくりしたような表情を浮かべたが、
直ぐに
「え〜ちょっと怖い顔しないでよ〜」
とクスクス笑い始めた
はぁ、朝から最悪の気分だ。
私は無言でそこを立ち去り、ロッカーに荷物を置きに行った。
「は?何あれ、つまんないの」
1人の陽キャが不機嫌そうに声を上げる
「もっと優しく言えないのかなー?」
もう1人の陽キャも嘲笑うようにそう言った。
「仕方ないよ、鈴乃さん、入学してから一度も笑ってるところ見た事ないもん」
ガタッ、私は勢いよく荷物をロッカーに入れ、早歩きで教室を出た。
…あれは嫌味なんかじゃない。事実なんだ
そう自分で心を落ち着かせる。
自分で決めたこと、だから…大丈夫。
気持ちを切り替えるために、私は屋上へと向かった。
私の学校では屋上は出入り自由なのだが、その事について公表はされていないので、気付いている人が居ない。
つまり、そこは私だけの秘密の場所なのだ。
いつも気持ちを落ち着かせたい時に屋上に行くのだが、流石に夏や冬などの気温が激しい時はとてもじゃないけど屋上になんて行くことは出来ない。
だけど、夏も終わり、季節が変わろうとしている今なら屋上に行けるのではないだろうか。夏休み前は中々行けなかったからなぁと思いながら、屋上のドアノブに手をかける。
目に沁みるほどの強烈な光が一気に私を襲いかかる。
眩しくて目を開けていられなかったが、何とか目を開くと
人影が見えた。
「あれ?」
その人は音に気づいて振り返ってきた。
…え?
私は動くことが出来なくなるほど驚く。
最悪だ…よりによって…
今目の前にいる人の名前は、朝日葵斗(あさひあおと)。
クラスの人気者でみんなから好かれている太陽みたいた人。明るくて運動神経抜群で、私とは遠い存在の人。
教室の隅っこで息を殺しながら、感情も出さない私とは程遠い存在。というか、関わることもないような人。
今すぐここを立ち去りたい。やっぱり今日は最悪な日だ。
「あ…鈴乃さん!」
立ち去ろうと背を向けた瞬間、私の名前を呼んだ。
またもや驚きのあまり固まる。
この人、私の名前知ってるんだ…いや当然か。
誰とも関わってこなかったとはいえ、クラスメイトだし、陽キャはクラスメイトの名前くらい覚えるよね。
流石に名前を呼ばれてしまったからには、このまま立ち去ることは出来なくなったので、諦めて振り返る。
振り返ったのはいいが、自分からどう会話すればいいか分からなく、黙って見つめていたら、
「屋上って解放されてたんだね、俺知らなくってさ!」
珍しくあたふたしている彼を見て、少し意外だなと感じた。
「鈴乃さんは知ってたの?」
質問…家族以外の人と会話するのはいつぶりだろうか
「まぁ、はい…」
当たり障りの無い返事をして、ここから立ち去ろうと思ったのだが、
「あのさ、ごめん、急なんだけど聞きたいことがあって」
彼が私に聞きたいこと?なんだろうと思って構えていると
「鈴乃さんってさ…なんで笑わないんだ?」
空気が変わった。はぁ、なんでそんなこと聞くんだろう?
「あなたに関係ありますか?」
思ったよりも棘のある言い方になってしまった。
「うーん、関係は無いかもしれないけど」
彼は少し考え込んだ後
「気になるからかな」
と満点の笑みで答える
「俺さ、ずっと鈴乃さんのこと気になってたんだよね、入学してから…」
私は目を丸くした。この人が私を…?
「まぁ今はいいや、いつか教えてよ」
「俺がお前を心から笑顔にしてやるからさ!」
は?、と声を漏らす。驚きのあまり目を見張る。
「なんで?」
彼はなにも気にしてないかのようにそういう
「鈴乃さんのことが知りたいから」
思わず呆れてしまう。
「ってことで、これからよろしくな、茜音!」
急に名前呼び?いやまって、そんなことより
今どういう状況?
キーンコーンカーンコーン、と予鈴が鳴る
「あ、予鈴だ、戻ろうぜ教室」
彼は屋上を後にした。
私は一歩も動けなくなる。
突然の展開に頭が追いつかない。
高校1年の夏も終わり、新学期が始まろうとしていた今、
私の中でなにかが、変わろうとしていた。
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高校1年の夏もあっという間に過ぎ、
新学期が始まろうとしていた。
うわっ…教室のドアを開けるなり私_鈴乃茜音(すずのあかね)は顔をしかめる。
私の席がクラスの、いわゆる陽キャという人に独占されていた。
私は一度深呼吸をし、その陽キャたちに話しかける。
「…あの、そこ私の席なんですけど」
陽キャたちは一瞬びっくりしたような表情を浮かべたが、
直ぐに
「え〜ちょっと怖い顔しないでよ〜」
とクスクス笑い始めた
はぁ、朝から最悪の気分だ。
私は無言でそこを立ち去り、ロッカーに荷物を置きに行った。
「は?何あれ、つまんないの」
1人の陽キャが不機嫌そうに声を上げる
「もっと優しく言えないのかなー?」
もう1人の陽キャも嘲笑うようにそう言った。
「仕方ないよ、鈴乃さん、入学してから一度も笑ってるところ見た事ないもん」
ガタッ、私は勢いよく荷物をロッカーに入れ、早歩きで教室を出た。
…あれは嫌味なんかじゃない。事実なんだ
そう自分で心を落ち着かせる。
自分で決めたこと、だから…大丈夫。
気持ちを切り替えるために、私は屋上へと向かった。
私の学校では屋上は出入り自由なのだが、その事について公表はされていないので、気付いている人が居ない。
つまり、そこは私だけの秘密の場所なのだ。
いつも気持ちを落ち着かせたい時に屋上に行くのだが、流石に夏や冬などの気温が激しい時はとてもじゃないけど屋上になんて行くことは出来ない。
だけど、夏も終わり、季節が変わろうとしている今なら屋上に行けるのではないだろうか。夏休み前は中々行けなかったからなぁと思いながら、屋上のドアノブに手をかける。
目に沁みるほどの強烈な光が一気に私を襲いかかる。
眩しくて目を開けていられなかったが、何とか目を開くと
人影が見えた。
「あれ?」
その人は音に気づいて振り返ってきた。
…え?
私は動くことが出来なくなるほど驚く。
最悪だ…よりによって…
今目の前にいる人の名前は、朝日葵斗(あさひあおと)。
クラスの人気者でみんなから好かれている太陽みたいた人。明るくて運動神経抜群で、私とは遠い存在の人。
教室の隅っこで息を殺しながら、感情も出さない私とは程遠い存在。というか、関わることもないような人。
今すぐここを立ち去りたい。やっぱり今日は最悪な日だ。
「あ…鈴乃さん!」
立ち去ろうと背を向けた瞬間、私の名前を呼んだ。
またもや驚きのあまり固まる。
この人、私の名前知ってるんだ…いや当然か。
誰とも関わってこなかったとはいえ、クラスメイトだし、陽キャはクラスメイトの名前くらい覚えるよね。
流石に名前を呼ばれてしまったからには、このまま立ち去ることは出来なくなったので、諦めて振り返る。
振り返ったのはいいが、自分からどう会話すればいいか分からなく、黙って見つめていたら、
「屋上って解放されてたんだね、俺知らなくってさ!」
珍しくあたふたしている彼を見て、少し意外だなと感じた。
「鈴乃さんは知ってたの?」
質問…家族以外の人と会話するのはいつぶりだろうか
「まぁ、はい…」
当たり障りの無い返事をして、ここから立ち去ろうと思ったのだが、
「あのさ、ごめん、急なんだけど聞きたいことがあって」
彼が私に聞きたいこと?なんだろうと思って構えていると
「鈴乃さんってさ…なんで笑わないんだ?」
空気が変わった。はぁ、なんでそんなこと聞くんだろう?
「あなたに関係ありますか?」
思ったよりも棘のある言い方になってしまった。
「うーん、関係は無いかもしれないけど」
彼は少し考え込んだ後
「気になるからかな」
と満点の笑みで答える
「俺さ、ずっと鈴乃さんのこと気になってたんだよね、入学してから…」
私は目を丸くした。この人が私を…?
「まぁ今はいいや、いつか教えてよ」
「俺がお前を心から笑顔にしてやるからさ!」
は?、と声を漏らす。驚きのあまり目を見張る。
「なんで?」
彼はなにも気にしてないかのようにそういう
「鈴乃さんのことが知りたいから」
思わず呆れてしまう。
「ってことで、これからよろしくな、茜音!」
急に名前呼び?いやまって、そんなことより
今どういう状況?
キーンコーンカーンコーン、と予鈴が鳴る
「あ、予鈴だ、戻ろうぜ教室」
彼は屋上を後にした。
私は一歩も動けなくなる。
突然の展開に頭が追いつかない。
高校1年の夏も終わり、新学期が始まろうとしていた今、
私の中でなにかが、変わろうとしていた。