どうぞ。
ありがとう。
いつもいつも、ちゃんとお礼を
言ってくれるところも
秀頼の好きなところの一つだ。
「先生」
「ん?」
優子はホッチキスで作業しながら
手元を見つつ言った。
「私って、
先生のお母さんですか?」
「…どっちかというと、
俺がお前のお兄さんだろうな」
「そこは"お兄さん"なんですね」
「さっきからなんだ」
チラッと視線を向けるも、
秀頼の眼鏡には白い画面が光るばかり。
どうかしてるな、私…
優子は「いーえ?」と言って
作業を続けた。
最近なんだか子供っぽい自分が
先生とお似合いじゃない気がして
嫌だった。
今は勉強に集中しなきゃ。
そう思って次の紙に手を伸ばすと、
「ぁ…」
不意に秀頼の手が触れた。
「すみませ__」
手をどけようとするも、
秀頼の右手は優子の手に
乗ったまま。
「…っ‼︎」
パソコンから目を離すことなく、
その細長い綺麗な指だけが、
優子のことを離さなかった。
「あの、せんせ…?」