お湯が沸くまでの間、
優子は秀頼の向かいに座って
資料に手を伸ばした。


「この束ごとに綴じればいいんですか?」

「さすがだな、助かるよ」

「いえいえ」

「終わったら実習の勉強
 手伝ってやってもいいぞ」

「助かります!」


秀頼が「単純だな」と呟いたのも束の間
カチッとお湯が沸いた音がした。

コップにはちみつを垂らして、
ゆっくりコーヒーを注いでいく。

もう何度したかわからないこの作業。
目を閉じてでもできることをしながら、
先程まで考えていたことが
頭によぎる。


「お母さん、か…」

「何か言ったか」

「言ってません」


パソコンの右隣にマグカップを置いた。