「びっくりです、
 先生からお呼ばれだなんて」


玄関のドアが開けられて
久々に見る秀頼は、
相変わらずのおうちスタイルだった。

眼鏡に黒のルームウェア。
それにお風呂上がりの
シャンプーの香り。


「少し手伝ってほしいことがあってな」

「またですか?」


リビングに案内されて、
いつもの定位置である
ソファの上に荷物を置いた。


「なんだ、不満か?」


デスクの上は資料まみれ。

優子はそのままお決まりの動きで
キッチンに向かった。


「私だって暇じゃないんですからね?」

「実習か。うちにくるんだろ?」

「え!」


優子はポットから秀頼に
視線を移した。


「どうして知ってるんですか⁉︎」

「森山先生が病棟に来ていた時に
 教えてくれたんだ」

「ドクターにまで?」

「あぁ」


絶対先生じゃなかったら
わざわざ言いに行かないだろうな。

優子は目の玉をぐるりと回してから
電気ポットのスイッチを入れた。