優子が疑問に思った内容は、
正確にはテストに出る範囲ではなかった。

ただ、一度疑問に思うと気になるタチで、
細かく調べ出すとキリがなくなるのが
優子の悪い癖だった。

友達に聞いても、
『そこまで出ないからやらなくていいよ』
と言われる始末。



「だから、先に進むのが嫌になっちゃって、
 ずっと呼吸器に手をつけていなかったんです」


一通り疑問を解消してもらってから
優子はぼんやりと資料を見ながら言った。


「痰のでき方とか、こんな細かいこと、
 気にしても無駄なんでしょうけどね…」

「無駄じゃないだろ」


秀頼の渋く柔らかい声が
優子の言葉を優しく遮った。


「看護師の国家試験を勉強する上では
 いずれこれぐらい細かいことも
 知っておいた方が良い」

「そう、ですか」


慰めてくれて、優しいな…


秀頼の普段はクール中のクールなのに
時にさらりと優しくしてくれるところが、
優子は好きだった。


「それに」

「…?」

「ここまで興味を持ってくれるのは、
 俺としては嬉しいし、
 全部教えてやりたいって思うよ」

「…」

「何かに興味を持つのは、悪いことじゃない。
 知恵は人間の魅力の一つなんだ。 

 努力しているお前を見ると、
 俺も頑張らなきゃって思えるしな」

「先生…」