「渋いですね」
やっと出た言葉に、秀頼は
「悪かったな」と愛想ない。
かと思えば、
「褒めてるのに」
「知ってるよ」
いたずらな微笑みを浮かべる。
その顔、ほんとずるい…
そんな余裕見せられたら、
どう反応するのが正解なのか
いつもわからなくなる。
あぁ、これが"沼"というやつなのか…
優子はそう思いつつも、
ずっと尾を引いている思いもあった。
作業中の秀頼を連れ出したことだ。
たまには気分転換をしてほしいと思って
外に誘ってはみたものの
(半分は浴衣姿が見たいと言う欲だったが)、
優しさで付き合ってくれただけかと
考えられないこともない。
「先生…」
「ん?」