やっと掘り出した深緑色の浴衣は、
所謂"おばあちゃんちのタンスの匂い"がした。


「えー!意外です、その色」

「どういう意味だ」

「見たいです!着てくださいよ!」

「今から花火大会行こうなんて言うんじゃないだろうな?」

「まぁまぁ、聞いてくださいよ」


そう言って優子に遊ばれるがままに、
気がつけば浴衣を着て、
帯をつけて、
大学近くの海岸沿いに来ていた。

学会での発表資料を整理していたはずが、


「なにやってんだ、俺は…」