「へぇ~先生の寝室ってこんななんだ」
「知ってたんじゃないのか?」
「いいえ?ここかな~と思って入っただけ」
社会科見学にきた子供のように見渡されては
秀頼もさすがに何も言わずにいられなかった。
と言っても、ベッドとクローゼット以外は
何もない部屋だが。
「浴衣探しに来たんじゃないのか?」
「ねぇ、一瞬だけベッド入っちゃダメ?」
「ダメ」
秀頼はクローゼットの奥の方に並んだ
衣装ケースを片っ端からあけていった。
服自体はそんなに多くはない方だったが、
もう何年も着ていないものが随分と出てきた。
秀頼の後ろから覗いてきていた優子の
気配が薄らいだところで、
「寝るなよ」
そう言うと、優子がまた拗ねた顔するのは
見なくても想像に容易かった。