「分からないところはないのか?」
秀頼の言葉に我に返って、
優子は「あ…」と身を乗り出した。
「それが、一つ、いや二つほど
わからないところがあったんですけど」
「どこ?」
「肺炎で喀痰が出るメカニズムが…」・・・
時刻は午後11時を過ぎていた。
いつもならとっくに家に帰されている時間だ。
優子は秀頼のアパートの向かいに住んでいる。
医者が住むような綺麗で新しくもないが、
秀頼の部屋と向かい合っているため
優子は気に入っている。
偶然近いアパートを選んだことから
運命を感じた優子は、
あれよこれよと秀頼にアタックをして
秀頼の家に居座れる仲にまでこぎつけたのだった。