「藤原先生って、何者なんですか?」
秀頼と優子の動きを唖然と見ながら、
南は隣にいた潤に言った。
潤は小さなため息を一つついて言った。
「ああ見えて、かなり怒ってるんじゃないかな」
「え、すごい軽くかわしているように
見えますけど…」
「周りにじゃなくて、自分に、だよ」
「自分に?どうしてですか?」
南に答えることなく、潤は「そこまでだ」
と、二度手を叩いて言った。
「キリがないってわかっただろ?」
そう言って後ろで見物していた中沢に振り返った。
「君のいう通り、俺たちは医者だ。
君らに手を出すことはない。
だが、君らにやられることも、
言いなりになることもない。
このことは、きちんと学校と教授に伝えさせてもらう」
潤の毅然とした態度に、
学生の身分の彼らは怯むのを隠せなかった。
「君らほど暇じゃないんだ。
帰らせてもらう。いいね?」
そう言って潤は秀頼に近づいた。
南も慌ててその後に続く。
「助かったよ。そろそろ目が回るところだった」
目頭を押さえる秀頼に、潤は「呆れた」といった顔をした。
「ここに来るまでのあの必死さはなんだったんだよ」
「予定調和は好きじゃないだろ?」
「とぼけるな」