「"お医者様"なら手なんて出せませんよねぇ?
 ましてや同じ大学の後輩に…?」


煽っていることは、優子にでもわかった。

優子はただ秀頼の袖を握りつづけることしかできなかった。

同時に、反省と後悔の念が増々強くなるばかりだ。


どうしよう、私のせいで…

私が先生を大変な目に…


ごめんなさい。

その表現では足りない気がして、


「せんせ…」


優子は秀頼の顔を見上げた。

だが、後輩の煽りに簡単に応えるほど、
秀頼は愚かではないことを、
優子はよく知っている。

じりじりと距離を詰めてくる男たち。

少し後ろにいた潤が、秀頼の背中を見て言った。


「ヒデ、放っておけ」

「あぁ」


秀頼は近づいてくる
目の前の男を避けていこうとするも、

優子の嫌な予感はまたもや的中した。


「医者の癖に無視してんじゃねぇよ…!」


右腕が大きく振り上げられ、
優子は思わず目を閉じた。