降りてきた中沢たちには目もくれず、
秀頼と、「潤」と呼ばれた男が、
優子と南を連れて出口へ向かおうとしたその時。
「待ってくださいよ、藤原先生」
中沢がそう言った。
医学部5年生ということは、
本格的に実習で病棟を回っているはず。
秀頼たちのことを知っていて当然だ。
秀頼は応えることなく、足を止めなかった。
が、無理矢理前に男たちが立ちはだかる。
「相手になってやるよ」とでも言いたげな
他人を見下す哀れな表情をした後輩たちに、
秀頼は表情一つ変えることなく言った。
「お前たちも医療者を目指すなら、
もうこんな場所から足を洗え」
優子が聴いたことのない、
ひどく冷たい声だ。
「あぁ、そうだよなぁ」
応えたのは、随分後ろにいた中沢だった。