足立の「まじか…」が
何を意味するのかわからなかったが、
優子は右奥に見える階段に駆け寄った。

軽く上を見上げると、
隙間から若い男が数人見えた。

一瞬足立の方へ振り返ると、


「こっち来な」


と優しい声で優子を呼ぶものの、
視線を合わせようとしない。


なんか、怖いかも…


胸のざわつきが大きくなる。


南…


優子が階段に足をかけると、


「優子ちゃん!」


足立の低い声が聞こえた。

ハスキーだが色艶のあるその声に
名前を呼ばれれば、
いつもの優子ならときめいてすらいただろう。

だが、今は違って聞こえる。


”そっちに行ったら危険だよ”


そう言われている気がする。