秀頼が退勤の打刻を済ませて
外に出た頃には、
とっくに月が夜道を照らしていた。

時刻は21時前。
このタイミングで病院を出たのは偶然だったが、
今帰れば、パーティーに向かう優子と
確実に鉢合わせるだろう。


急ぐべきか、否か…


また柄にもなく悩んでいる自分に、
一体どうしたものか。
戸惑っている自分がいる。

昼にした看護師との会話が、
秀頼の中でどうしても引っ掛かっていた。


『1年目だよね?』

『はい、そうです!』

『てことは、今の医学部5年生と同学か?』

『…はい』

『中沢って奴のこと、知ってるか?』

『ぇ…』